
・着物の営業・販売16年
・着物の店舗運営11年
・今は着物の制作にたずさわっています。
僕が着物の業界に入った16年前、それはフォーマル需要の最終末期でした。
僕が勤めた着物屋さんの店頭には、右に『振袖』、左に『留袖』、そして中央に『付下(つけさげ)』が配置されていました。
僕はそこでひたすらお客様から名簿を頂戴し、その名簿に対して電話で『展示会』への勧誘を行っていました。
『展示会』では、高額の着物がたくさん並んでいました。
僕は一言も発することができずに、着物が売れていく様子をただ眺めているだけだったんですね。
今もこの『流れ』を続けていることろはあります。
ただ、お客様の『思いと行動』は随分変わりました。
まずは、右にあった『振袖』が売れません。
新成人の人口は年々減っていますし、振袖も購入以外に手に入れる方法が山のようにあります。
左にあった『留袖』はより一層悲惨です。
晩婚化と、結婚式の多様性により留袖を『持つ』という感覚はもう古いようにも感じます。
そして一番大きな違いはお客様が『カジュアル』思考になったということです。
着物は『持つもの(=フォーマル)』から、『着るもの(=カジュアル)』へ大きく変わってしまいました。
これは当たり前の流れですよね。
ではこれから『着物』はどうなっていくのか?

目次
【2020年】着物業界の未来予想〜下がり続ける価格の中で〜

着物の値段は随分安くなりました。
着物の需要(フォーマル)の低下と、流通の変化によって着物の価格は下がっています。
これは『価格が適正に近づいてきている』という表現の方が正しいですよね。
そして、これからもこの流れは続いていきます。
当然『モノとしての価値』がある着物もあります。
ですがそれ以上に気軽に買える着物がどんどん出現しますし、お客様はそういう着物を選ぶので、全体的に着物の価格は下がるんですよね。
価値のある『着物』の台頭
その中で『価値(価格の高い)のある』着物の存在感は、もっと上がると僕は考えています。
ただそこに『フォーマル(=必要性のもの)』はありません。
それとは違う『価値の高い着物』を提供しているところが、お客様から選ばれるようになるはずです。
ではその『価値』を生み出すものは一体なんなのか?
キーワードは
・人とのつながり
・販売のエンターテイメント
こういうところです。
物語という『価値』
着物には物語があります。
つまり『秘話』です。
この『物語(秘話)』の価値をお客様に感じてもらうことが重要になります。

着物を語る人の多くは『着物の知識(ルール)』であったり、『着物の種類』を語っているだけなんですね。
それでは、「ふ〜ん…」とはなるんですが、『感動』にはつながりません。
これでは『価値ある着物』を販売できません。
これからは『物語を語ることのできる』着物の専門家が重宝されるんですよね。
人とのつながり
『価値(値段の高い)ある着物』を買う人は、『誰から買うか?』を重要視します。
なので、これからは現場のチカラが着物の販売において最も重要なことになります。
この『人とのつながり』というのは、『贅沢を極めた接待』なんかではありません。
『普段の付き合い』の密度なんですよね。
これからの着物業界はこの『現場力』が更に重要となりますし、それは『能力』ではなく『継続力』がポイントとなります。
販売のエンターテイメント性
上記の項目も踏まえて、これからの着物の販売は『エンターテイメント性』に富んでないといけなくなります。
着物をモノとしてだけで販売するのではなく、その販売自体に『ドキドキ・ワクワク』とか『感動』の要素を取り入れないといけないんですよね。
これはどんな商売にも重要なことですが、着物の業界はこのことにことさら遅れていると思うんですよね。
ということは、『のびしろ』でもあるということです。

【2020年】着物業界の未来予想〜着る機会を提案したもの勝ち〜

着物の『営業』では何をすればいいのか?
これからの着物の『お客様へのアフターフォロー』の最重要点は『着る機会の提供』です。

『着物を使用しないと新しい着物は買わない』、この『普通』をもっと真剣に考えるべきです。
『着る機会の提供』というと、『大きなパーティー』みたいなものをすぐに考えがちです。
ある着物の企業の上役の方にお話を聞いたら『着る機会の提供はどうしても経費がかかるので…』と言っていましたが、別にお金をかけて大層なことをしなくてもいいんですよね。
お客様もそこを求めている人だけではありません。
そんな『着る機会の提供』について、もう少し掘り下げてみます。
着物を『着る機会の提供の基本』は女子会
『着る機会の提供』といえば…
・観光地を散策する
・美術館的なところに行く
こういったものを第一に思い浮かべます。
というより、これは着物の業界のクセです。
『おもてなし=豪華なもの』という勘違いかもしれません。
こういうのも確かに素敵なことではありますが、女性が一番好きなことは『おしゃべり』です。
『おしゃべり』は『大規模大人数』では難しく、『小規模少人数』であることが求められます。
『女子会』は気の合う仲間たちと、気軽に行ける場所で行いますよね。
これを起点に『着る機会の提供』を考えると、お客様が楽しくて長続きするものを考え出すことができるんです。
営業パーソンの『手作り感』が心を打つ
そして、『着る機会の提供』は普段からお客様と接している営業パーソンが、『心を込めて』作るのが一番効果的でお客様の心にも届きます。
そこに、お金をかける必要は全くありません。
みんなが『ほっこり笑顔』になれるものを用意すれば、『おしゃべり』はもっと弾み、みんなが満足する『着る機会の提供』ができるんですよね。
お金をかけるなら『体験』に
着物を着たいお客様が欲していることは、『着物の体験』です。
掘り下げると『着物が作られるところを見る』という体験です。
『着物の産地』であったり『着物の工房』であったりを、自分の目で見て体験することを『潜在的』に求めています。
これは確かに『経費』と『準備』がかかりますが、非常に効果が高いです。
『おしゃべり』のできない『大規模大人数』にして『経費』をかけるより、力の入れどころを考えるべきなんですよね。

『着物の販売』と『着物の体験』は切り離して考えないといけません。
『着物男子』を取り込もう
最近は着物を着る『男性』が増えてきています。
着物業界は『女性』が中心でしたし、基本的にはこれからもそれは続きます。
でも、おしゃれな着物男子が増えてきているものまた事実です。
『着る機会の提供』に男性も取り込むことができたら、幅はもっと広がり盛り上がると思います。
ぜひ、力を入れて欲しいところですよね。
【2020年】着物業界の未来予想〜着物の価値は『着姿』の価値〜

着物の値段が下がり、着物を着る機会を求めている人が増えているという話をしてきました。
ということは、これからの着物の価値はその着物の『着姿』になるということです。

素敵な『着物の着方(着付)』を提案する
まずは『着物の着方(着付)は難しい』という概念を取っ払うことが、これからの着物業界は求められます。
着付教室も『着付を教える』というより、『1日でも早く着物を着れるようにする』が重要になります。
その上で、その着姿が『綺麗で素敵』でなければいけません。
なので、『着方(着付)』は高い専門性を求められるようになります。
YouTubeでも『着付を教えるコンテンツ』が人気を博しています。
着物の技術といえば『着物の知識』でしたが、これからは『着方(着付)のスキル』になるんですよね。
着物のことを知らなくてもいいから、『誰もが羨むような素敵な着姿』になりたいですもんね。
コーディネートを重要視する
『着付(着方)』と同時に重要なのが、コーディネートです。
着物や帯などは『立派でセンスのあるもの』がいっぱいあります。
ただそのコーディネート品になると、5ランクくらい下がるのが着物の業界の現状です。
やはり『フォーマル(=必要性)』以外で着ることを想定されてないんですよね。
僕も新入社員の頃は『コーディネートは覚えろ』と言われてましたが、それこそフォーマルの発想ですよね。
これからはこのコーディネートのセンスが、その会社か店かの『格』を決めることになります。
そこで『センスなし』の烙印を押されてしまうと、お客様はもうそこでは『お得で便利なもの』しか買いません。
それでは企業として成長していくのは難しいですよね。
和装小物革命
このコーディネートの流れは確かにあり、着物のコーディネート品はどんどんおしゃれになってきています。
その流れがまだ届いていないのが『和装小物』です。
着物の和装小物の色は大体、『ピンク』か『白』です。
『見えないんだからなんでもいい』ということかもしれませんが、どうせ作るならおしゃれなものを作って欲しいんですよね。
絶対に支持を集めると思うんだけどなぁ…
まとめ

着物は歴史と伝統のあるものですが、それに囚われすぎて『変化』をしないはいけないんですよね。
お客様からの支持を集めることができたら、『お客様の数』が増えるんです。
着物を楽しむ人を増やすことが、着物の業界に科せられた1番の課題なんですよね。
着物にはドラマがあります。
着物でしか味わえない『満足』もあります。
僕もその貢献に注力していきます。
これからもどうぞよろしくお願い申し上げます。
では、よき『きもの』ライフを(^^)y
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