【知っておきたい知識】着物の種類〜TPOと業界の戦略〜

着物の知識
●着物の種類ってどうしてこんなに多いの?
●着物のTPOを決める要素とは?

着物の種類は複雑で、それでいて今なお変化しています。

さとし
種類という軸だけでなく、季節や年代、帯などの要素も加わると、もっと複雑になります。
この記事では、着物の種類の知識とTPOと見分け方、そして種類が多い理由についてお話ししていきます。

 

その前に、少し私の自己紹介を…

さとし
私、さとし。
・着物の営業・販売を18年しています
・着物の店舗運営(店長歴)11年
・現在は着物の制作にたずさわっています。

 

この記事では以下のことを中心に話を進めていきます。

・着物のTPO
・『色』『柄』『柄の配置』『形状』『家紋』というTPOを決める要素
・種類を多くした『呉服業界の事情』

この記事の内容は、着物を楽しむ上で知っておくと間違えが少なくて済む内容です。

着物好きには必須の項目です。

着物の種類の知識【TPOって何?】

着物の種類の知識【TPOって何?】

まず『TPOとは何か』です。

TPOとは…

時【time】
所【place】
場合【occasion】
これらに応じた使い分け

ということです。

 

さとし
着物には場面に応じた装いがあるんですよね。
着物好き男子
洋服だって、それは同じですよね。

【着物の種類】『TPO』は変化する

さとし
着物の『TPO』は時代や環境によって変化し、そのスピードは劇的に速いんですよね。

なので『あたりまえ』も、あっという間に変化します。

 

さとし
例えば、洋服の世界で『ビジカジ(→ビジネスカジュアル)』という言葉があります。
ビジネスにカジュアル要素をいれたら、私が新入社員のころ(約20年前)ならぶっとばされました(笑)。
着物好き男子
今は、『おしゃれで親しみやすい』とい、受け入れられていますよね。
さとし
時代の変化と言われれば、それまでですが、着物でも同様のことが起こっているんですよね。

 

これを前提に、着物の『TPO(=ルール)』について話していきます。

【着物の種類】TPOを決める要素

着物好き女子
着物のTPOを決める要素って何なのかしら?
さとし
それは『』『』『柄の配置』です。
補足で『着物の形状』と『家紋のあるなし』ですね。

詳しくお話ししていきます。

【着物のTPOを決める要素】色

着物の格の高さは『色』によって表されます。

最も格が高いとされている色は『白』ついで『黒』です。

 

留袖という着物の種類には『黒留袖』と『色留袖(黒以外の色)』があり、黒の方が格が高いです。

白は格が高すぎて、白装束(死装束→つまり仏様)などにあるように、一般的に着る色ではありません。

 

さとし
ということで『色』は着物のTPOを決める要素なんですね。

【着物のTPOを決める要素】柄

着物の柄は無数にあります。

その中でも伝統あるおめでたい柄が、フォーマルの柄とされています。

着物好きマダム
確かに『格調の高い柄だから』という理由で、着物を揃えたものだわ。
さとし
柄は本当に無数にあるので、説明していたらキリがありません。
むしろ次に説明する『柄の配置』という要素の方が重要です。

【着物のTPOを決める要素】柄の配置

着物仙人
スーツはスーツの形があり、ズボンとスカートは形が違うじゃろ。
洋服はその『形状』でTPOが決まるのじゃ。
『襟の無いシャツ』より、『襟付きのシャツ』のほうがフォーマル感が増すもんじゃろう。
だが、着物のTPOは『形状』の要素はほとんどないのじゃ。
重要なのは『柄の配置』じゃ!
『着物の形状』がTPOを決める要素については後述します。

 

例えば、『留袖』と『訪問着』の見分け方を解説します。

黒留袖の見分け方
さとし
上の写真は留袖です。
『留袖』は、裾周りに柄があり、上半身には家紋以外の柄はありません。
訪問着
さとし
上の写真は訪問着です。
『訪問着』は、基本的に裾、左肩前左袖前、右肩後右肩前に柄があります。

 

このように、『柄の配置』で着物のTPOは決まります。

【着物のTPOを決める要素】着物の形状

着物の形状は基本的に一緒と言いました。

さとし
ただ、『振袖』のように袖の長さ(形状の違い)が着物の種類を分けている要素になっているものもあります。
着物好き女子
確かに、袖が長いから振袖だものね。

 

さとし
形状の違いは『着物より帯の方』が、その要素があります。

袋帯と名古屋帯はその長さが違いますし、半幅帯は幅が短いと入った具合です。

【着物のTPOを決める要素】家紋のあるなし

最後は『家紋』という要素です。

 

着物好きマダム
家紋がある方が格が高くて、フォーマル要素が強くなるわよね。
さとし
そうですね。
そして家紋は『一つ紋』『三つ紋』『五つ紋』とあるように、紋の数が多いほど角が高いとされています。

【知っておきたい知識】着物の種類が多いのは『業界の事情』

着物の種類が多い理由は『業界の事情』にあり
着物好きマダム
それにしても、着物って種類が多いのよねぇ…
さとし
着物の種類の多さには『呉服業界の戦略』が隠されているんですよね。

着物の種類が多い本当のワケ

着物仙人
着物の種類の多さには、売り手の『売りたい』という発想が隠されているのじゃ‼︎

特にフォーマル着物は数多くの種類が存在します。

さとし
黒紋付、黒留袖、色留袖、訪問着、付下色無地
これらは全てフォーマル用途の着物です。

 

着物好きマダム
これらを全て揃えないといけない、そんな風に言われたこともあったわ。

種類が多く細かいルールがあれば『数を持つ理由』が生まれます

着物のルールでは『この場面ではこれ』『これなら間違いない』『恥かしくないのはこれ』なんて具合に型が決まっているんです。

この『恥ずかしくないのはこれ』という概念は、日本人の特性をよく表してると思います。
一昔前の着物屋は、これを言うだけで着物が売れました。
そしてまだその傾向は残っています。

 

着物好き女子
私のお母さんもたくさんの着物を揃えたけど、実際に使ったは1枚か2枚くらいだと言っていたわ。
さとし
実際は、フォーマルの衣類なんてそんなにいらないですよね。
ただこうやって種類を多くすることが、広がりゆく洋服の中で、『フォーマル需要』で生き残りをかけた呉服業界の戦略なんですよね。

【着物の知識】男女で違う着物の種類の『数』

着物好き男子
男性用の着物の種類は、女性のそれと比べて圧倒的に少ないですよね?
さとし
そうなんです。
男性着物は、フォーマルとカジュアルのおおまかな違いしかありません。

 

どうしてか?

さとし
先ほどの戦略から考えると、着物の商売における『ターゲット』は女性に絞られているということなんですよね。

 

歴史的な背景を探ると、明治維新以降、男性のほうが早く洋装化が進みます。

公な場面に出る男性のほうが、西洋に並んでいくための洋装化が進めたからです。

さとし
一方で女性は家庭で着物を着続けます。
だから『女性の着物』のほうが、種類的にも発展していくんです。

洋服で言えば、男性のほうがフォーマル需要が多いんです。

『TPOは、商売の要素と切り離して考えることはできない』と言えるんです。

まとめ

☆この記事で話したこと☆
✔︎着物のTPOを決める要素は…
→『色』『柄』『柄の配置』『形状』『家紋のあるなし』
✔︎着物の種類が多い理由は、呉服業界の戦略がある
→種類が多いとオススメする理由ができる

 

衣類は誰かが着ることで発展し、バリエーションも豊富になります。

着物はその地位をどんどん、洋服に脅かされているんです。

フォーマル需要はどんどん狭まります。

さとし
だから、着物はもっとカジュアルに舵を切っていかないといけないんですよね。
それを思いながら、私も活動を続けているんです。

では、よき『きもの』ライフを(^^)y