着物の商売をしている不思議なことに多々遭遇します。
この道を17年やっていますが『着物屋の人には、無条件に着物のことを否定的に言ってもいい』、そんなルールがあるような気がします。
例えばこんな会話があります。
お店で着物を見ているお客様がいます。
素敵な着物でしょう?
何かお探しですか?
家にもたくさん着物があって…
タンスの肥やしになっているんです。
でもお着物を気にしてられたから、何かご着用の予定があるのかなと思って…
母に揃えてもらった着物はあるけど一回も着ていなくて、しつけ糸がついたまま…
こんな会話が日常茶飯事のように起こります。
わかりやすいように、ラーメン屋に置きかえてみます。
ご注文お決まりで!?
家にもたくさんのラーメンのストックがあって、ほかの食材を置けなくて困っているんです。
でもうちの豚骨ラーメンは天下一だぜ!!
母からつくってもらったラーメンは、すべて食べずに残してたくらいなんです。
二度と来るんじゃねぇ!
こうなるはずです。
こんなことが起こる商品は着物だけだと思います。
でもこれでは、着物の商売を敬遠する人が出てきても仕方がありません。
やはり着物屋(着物という商品も含め)に対して、お客様は独特な先入観を持っているように思います。
今回は私、さとしが着物屋を代表して『ちょっと待ってよ!』と突っ込みたくなる言動を、考えていきたいと思います。
着物販売の評判【たんすの肥やしという残念な言葉】
『たんすの肥やし』という言葉がありますが、着物屋さんにとっては残念な言葉です。
別に僕たちに言わなくてもいいのに、そう思う場面によく遭遇します。
『たんすの肥やし』というのは要するに、『使用することがない衣類がたんすを占拠している状態』ということです。
解決の仕方は以下の4点です。
②誰かにあげる
③買取をしてもらう
④やっぱり、これから着てみる
言っていることはわかりますが、何か行動をしないと『たんすの肥やし』問題は解決しません。
僕は着物屋という立場もありますのでやはり着物は着て活用してもらう、その方向性をおススメしています。
『着れない・着る機会がない』って…わがままに見えます
『着れない・着る機会がない』、着物の3大ネックのなかの2つです。
でも冒頭の会話のように、店頭でいきなりそのことを話し出してくる人がいます。
これも楽器屋でピアノを見てて、「ピアノが弾けない、弾く機会がない」と言っているのと同じです。
そうだとは思うのですが、本来ピアノを見ている人はピアノに憧れ(もしくは興味)があるはずなんですよね。
着物屋で着物を見ている人に、「着物は着れなくて、着る機会がない」と言われるとなにか駄々をこねている、そう見えるんですよね。
こっちとしてはそう言われてしまうと、もうコミニケーションの取りようが無いんですよね。
接客されるのが嫌だなと思うなら
着物屋さんは『しつこい』というイメージがあるかもしれません。
というより、実際にしつこい販売や営業を受けたことがあるのかもしれません。
今の着物屋さんは昔ほどしつこく営業してきませんし、一人でゆっくりみたいという旨を伝えたらそうするはずです。
そのことを伝えるのも、コミニケーションなんだと思います。
店サイドも、お客様に気持ちよく着物を見てほしいと思っています。
そのことをお互いが分かり合えると、お客様にとっても店にとっても気持ちいいですよね。
全員が幸せになれる発想です。
言葉は大切なんですね。
一人でゆっくり見たいのであれば言いましょう。
と…
まとめ
私は17年間『きもの街道』をひた走っています。
その中で、思い出に残るお客様との出会いがたくさんありました。
そして着物を通したお客様のドラマを、数多く見てきましたし演出してきました。
そのドラマを作るのはお店というコミュニティーです。
出演者は、『お店の店員』でもあり『お客様』でもあるんですね。
そこに人と人との物語があるから楽しさも生まれる、そして着物という要素がはいると『物語』はもっと色めくんです。
やっぱり、着物は素敵なんですよね。
そんな着物を愛していただけると、これに勝る喜びはありません。
では、よき『きもの』ライフを(^^)y
・着物の営業・販売17年
・着物の店舗運営(店長歴)11年
・現在は独立し、着物の制作にたずさわっています