着物の昔と今との違い【気になる値段と洗濯方法の2点を解説】

着物の知識
●着物の昔と今との違いって?
●着物の昔の値段って?
●着物は昔はどうやって洗濯していたの?

『昔の着物がどうだったのか?』は、気になる話ですよね。

さとし
着物の昔と今の違いは様々あります。
この記事では、様々ある違いの中で『着物の値段』と『着物の洗濯方法』の2点を取り上げます。
昔と今の違いを鮮明にすることで、着物選びや着物の扱いの基準を知ってもらう試みです。

 

内容に入る前に、少しだけ私の自己紹介を…

さとし
私、さとし。
・着物の営業・販売を19年しています
・着物の店舗運営(店長歴)11年
・現在は着物の制作にたずさわっています。

 

イメージしづらいほどの昔を取り上げても仕方がないので、この記事では昭和初期〜中期と、今との比較をしていきます。

主なトピックは以下の2点になります。

・昔(昭和30年)の着物の反物の値段は2500円⁉︎その内容とは
・着物の洗濯といえば昔は『洗い張り』だった

着物に対する感覚は、時代によって変化します。

その流れを把握することで、着物の基準と感覚を知ることができます。

着物の昔と今の違い【実録・着物の値段】

着物の昔と今の違い【実録・着物の値段】
着物好き女子
昔の『着物の値段』っていくらだったのかなぁ…?
さとし
確かに着物の値段って気になります。
そして昔との比較は、誰もが興味のあるところですね。

 

この話を進めていくにあたって、参考にしたサイトを紹介しておきます。

着物の昔と今の違い【昔と今の値段を比較する】

コチラのサイトでは、明治から現代に至るまでの、様々なものやサービスなどの値段の平均を一覧にしています。

さとし
その中の『絹一反の値段』と、その時の『大卒者の初任給』を抜粋しました。
こうすることで、当時の貨幣感覚からの着物の値段がわかると考えたからです。
着物好き男子
大卒の初任給が分かれば、当時のお金の価値がイメージできますね。

 

以下がその抜粋です。

明治18年
→絹一反1.7円 初任給8円(21.3%)
大正14年
→絹一反9.8円 初任給50円(19.6%)
昭和30年
→絹一反2500円 初任給1.1万円(22.7%)
昭和50年
→絹一反2.9万 初任給8.4万円(34.5%)
平成12年
→絹一反11.3万円 初任給19.7万円(57.4%)
令和2年
→絹一反5万円位 初任給22.72(22.0%)

※カッコ内は、初任給における絹一反の値段の割合

着物好き女子
当然、値段は高くなってるけど、昭和30年ごろまでは、初任給からの割合では変化はないわね。
着物好き男子
てことは、相場があったってことがわかるよね。
着物好きマダム
でもそこからはすごく値段が上がっているわ。
平成12年なんて、初任給からの割合の約6割だものね。
着物って、どんどん高級品になっていったのね。

 

どうしてそうなったのでしょうか?

呉服業界の宣伝活動【上がる着物の値段】

着物好きマダム
着物を着る人の減少とともに、着物自体の値段は高くなっているということですよね。
さとし
これには呉服業界の宣伝活動が、大きく関わっています。

 

戦後、洋服を着る人が増えることにつれ、着物の需要は右肩下がりになります。

さとし
これに危機感を覚えた呉服業界は、着物のルールやTPOなどを細かく決め、その宣伝活動に努めます。
着物好きマダム
確かに着物って『これがないといけない』っていうのが、たくさんあったわよね。

 

さとし
そうなんですよね。
その宣伝活動が功を奏して、着物は『着る機会がないけど、いざという時には必要』な高級品になっていくんですよね。
着物好きマダム
着物を揃えることって『ステータス』だったのよね。

 

さとし
でも、その流れも終わりを迎えようとしているんですよね。

2極化する着物の値段【多様化する着物への感覚】

着物好き男子
最近、値段が下がっているのはどういうことなんだろう?
さとし
最近は着物も多様化しています。
高級路線を貫くお店や会社がある一方で、買いやすい値段で着物を販売するところも増えているんですよね。
着物好きマダム
だから相対的に着物の値段は安くなっているのね。

 

着物好き女子
普段に着物を着る人や、着たいと思う人が増えているのよね。
給料の6割も占めるような買い物って、『普段着ではない』って普通は思うわ。
さとし
この流れはもっと進むはずです。
気軽に着物を着たいと思う人が増える一方、憧れの着物のイメージも無くならないと私は考えています。

着物の昔と今の違い【着物の洗濯方法】

着物の昔と今の違い【着物の選択方法】
着物好き女子
着物って、昔はどうやって洗濯していたんですか?
さとし
昔の着物の洗濯方法は『洗い張り』でした。
現在は家庭で洗い張りをすることはほとんどありませんが、戦前は家庭でも洗い張りをしていました。

 

着物好き女子
『洗い張り』って、どういう洗濯方法なんですか?
さとし
詳しく解説していきます。

【着物の洗濯方法】洗い張りとは

洗い張りとは…
着物をほどいて一枚布の形状にして水洗いし、両サイドに針のついた竹ひご(伸子)や、張り板に張り、糊付けしながら乾かす洗浄工程
洗い張りの『洗い』は洗浄の工程で、『張り』は仕上げ・乾燥の工程。

 

着物好き女子
解いて洗って、乾かしたあとはどうするんですか?
さとし
着物として着るには、縫い直す必要があります。
つまり、着物を仕立てることを前提とした洗濯方法なんですよね。

 

戦前は『女性にとって和裁は必須』という時代があり、家庭で女性が着物を繕うのが当たり前でした。

着物好き女子
そういう時代じゃないと、家庭で洗い張りなんてできないわよね。
さとし
そうなんです。
今、洗い張りをする場合は、ほとんど専門の業者に頼みます。
洗い張りとは『大掛かりな着物のお手入れ』という位置付けなんですよね。

 

それは値段にも反映されています。

着物好きマダム
洗い張りに仕立てが入ると、結構値段になるのよね。
【参考】洗い張りの値段
Wikipedia先生によると、洗い張り代の相場は12,000円、そこからの仕立て代の相場は38,000円だそうです。

 

着物好き女子
そうなんだ。
一回のお手入れに、そこまで値段がかかるのは…
洗い張り以外に、着物の洗濯方法ってないんですか?
さとし
それが次に話す『丸洗い』です。

【着物の選択方法】丸洗いとは

丸洗いとは…
ドラム式洗濯機で石油系溶剤を使い、着物を解かずに洗うやり方です。
いわゆるドライクリーニングです。
さとし
絹は水に濡れると縮む性質があるので、石油系溶剤を使います。
なので、丸洗いでは油性の汚れは落ちますが、水溶性の汚れは落ちません。
着物好きマダム
だから、そういう汚れを落とすには『シミ抜き』っていって別になるのよね。

 

着物好き女子
丸洗いも家庭ではできないの?
さとし
専用のドラム式洗濯機を、家庭で用意するのは一般的ではなく、多くの注文を受け付ける専門の業者に頼むのが普通ですね。
着物好き女子
でも、着物をほどかずに洗うから、かかるコストは低そうよね。
さとし
そうですね。
洗い張りと比べると安い値段で、丸洗いをすることができます。
【参考】丸洗いの値段
私のブログ記事で19社の丸洗いの値段の平均を出しました。
その結果は『6,143円』でした。

着物のクリーニングの相場【19社の平均を調べました】

まとめ

☆この記事で話したこと☆
✔︎着物の値段は戦後高級路線になり、今は2極化している
✔︎着物の洗濯方法は、昔は『洗い張り』今は『丸洗い』が一般的

着物の感覚が昔と今では、ずいぶん違うことをご理解いただけたと思います。

さとし
そして、これからもそれは変わり続けます。

その未来を見据えるために、昔のことを知っておくことは非常に大事だと思います。

 

では、よき『きもの』ライフを^_^ y