おはしょりとは?【概要・歴史・長さの3点を解説】

着物の知識
●おはしょりってどんな意味があるの?
●おはしょりっていつからその形になったの?
●綺麗な着姿のためのおはしょりの長さって?

おはしょりって着物特有の独特な着方です。

さとし
着付を習う人にとって、『おはしょりを綺麗にすること』は重要であり困難でもあります。
そんな大きな関門となる『おはしょり』とは、どうしてできあがったのでしょう?
この記事は、おはしょりを紐解くことで『着物の楽しみ方』を追求する試みです。

 

内容に入る前に少しだけ、私の自己紹介を…

さとし
私、さとし。
・着物の営業・販売を19年しています。
・着物の店舗運営(店長歴)11年
・現在は独立し、着物の制作にたずさわりながら、全国各地で着物の提案活動をしております。

 

この記事は、以下の3項目で構成されています。

・おはしょりの部分と名前の由来
・おはしょりの歴史【どうしてあんなに綺麗にしないといけないか】
・おはしょりの理想的な長さは  

この記事を読むことで、今の着姿がどうやってできたのかがわかります。

読み進めてみて下さい。

おはしょりとは?【その部分と名前の由来】

おはしょりとは?【その部分と名前の由来】

まずはおはしょりの基本的な解説です。

さとし
おはしょりとは、現代の女性の着物の着付において、丈を『ちょうどよい長さ』に調整した時に出る折りたたんだ部分のことです。
おはしょり
着物好きマダム
『おはしょりを綺麗に』って、着付でうるさく言われるのよね。
さとし
確かに、今の着物の着付では『おはしょりを綺麗に整えること』は着姿のポイントとされ、多くの人が意識します。

 

着物好き女子
どうして、その名前がついてるの?
さとし
おはしょりの『はしょる』とは『かいつまんで手短にする』という意味で、おはしょりの発祥の言葉です。
着物好きマダム
つまり着物の長さを、はしょってるってことね。

 

さとし
ちなみにおはしょりを作らない着物は対丈(ついたけ)』と呼びます。
着物好き男子
男性の着物は対丈ですよね。
さとし
男性の着物は昔も今も、ずっと対丈なんですよね。
着物好き女子
羨ましい…

どうしておはしょりは女性だけ?

着物好き女子
でも、どうして女性にだけおはしょりがあるんですか?
さとし
以下のような理由があると考えられます。

 

・女性にとって丈の長い着物はファッションであり、丈の短い着物は貧さをイメージさせるものであった。
→労働をする女性は短い丈の着物を着ていた。
・その人にしか着れない対丈の着物を、女性がたくさん持つのは贅沢とされた。
→外に出る男性の方が、優先された。
・古くは女性は(今と比べて)たくさんの子供を出産し、体型変化が多かった。
→丈の長い着物の方が便利であった。
さとし
こういった歴史的な背景や女性を取り巻く環境が、女性のおはしょりを定着させた要因となっているんですね。

 

続いては、そんなおはしょりの歴史を、もう少し詳しく見ていきます。

おはしょりとは?【それは、いつからできたのか】

【歴史】着物の種類〜おはしょりについて考える〜

続いては『おはしょりができるまで』の歴史についてです。

おはしょりの歴史【できるまで】

江戸時代初期の着物は『対丈』で、おはしょりはありませんでした。

さとし
その頃の着物は丈が長く、地面に引きずるほどの長さでした。
着物仙人
これを『引摺(ひきずり)』と言うのじゃ。

 

江戸時代には着る物についても統制が行われ、着物の生地となる反物の長さも規定されます。

さとし
その時に反物は長めに作るように定められました。

これが『仕立て上がりの寸法』にも反映されて着丈が長くなり、何かしらの方法で調整する必要が出てくるんです。

 

さとし
当時の調整の仕方には、以下のようなものがありました。
おはしょりの原型となるものもあります。
●褄取(つまどり)をする
→着物の前をつまんで持ち上げる所作
褄取をする舞妓
写真は褄取をする舞妓
着物好きマダム
舞妓さんの優雅な姿の代名詞とも言えるわよね。

 

●抱え帯やしごき帯を使う
→メインの帯をした後に、上げた裾を固定する帯
着物好きマダム
余分な部分を上げておく帯があったってことね。

おはしょりの歴史【できてから】

江戸時代後期になると、おはしょりを作ることが一般的になっていきます。

さとし
やはり『引摺』は機能的にも使いにくく、その頃には引摺といえば、『めかしこんで働かない女性』を指す否定語になっていったんですよね。

 

着物好きマダム
結婚式の新婦の衣装に『引摺』が使われることがあるわよね。
今では儀礼的なものになってるのね。

 

さとし
さらに明治になると、おはしょり姿は日常的になります。
そして現在と同様に、『帯を締める前におはしょりをつくる』やり方に変わります。
着物好き女子
大体100年くらい前に、今と同じような着姿になったのね。
さとし
今では当たり前の着姿も、その歴史は案外浅いんですよね。

おはしょりの歴史【今とは違うおはしょり】

昭和初期ごろまでは、襦袢もおはしょりが必要な着丈の長さがありました。

着物好き女子
襦袢もそうだったんだ。
大変そうね。
さとし
なのでこの時代のおはしょりは、ぽってりと膨らんだものだったんですよね。

 

着物好き女子
今では『良しとされない』着姿だけど、当時はそれが普通だったんだ。
着物好きマダム
着物が本当に日常着であった頃は、そんなに気にすることなく着ていたってことね。

 

そして昭和30年くらいになると、『襦袢が対丈で仕立てられる』ようになり、おはしょりはスッキリしたものになっていきます。

さとし
これくらいから、着付で『おはしょりは綺麗に』が求められるようになってきます。
着物好き女子
今に通じてくるのね。
着物好きマダム
今はそれが主流というか、そうでなくてはいけないとされているくらいだわ。

おはしょりとは?【理想的な長さ】

まずは理想的なおはしょりの姿を指し示します。

●おはしょりの長さは5〜6センチ
●おはしょりは1枚で
●衽線を合わせる

詳しく解説していきましょう。

理想的なおはしょり【長さは5〜6センチ】

理想的なおはしょり【長さは5〜6センチ】

おはしょりは5〜6センチが理想です。

さとし
身長の高い人は、若干長くとってもいいでしょう。

 

着物好き女子
いつも、おはしょりが長く出てしまうんですけど、どうしたらいいですか?
さとし
腰紐の位置を高くすると、おはしょりが短くなります。
逆に腰紐の位置を低くすると、おはしょりは長くなります。

理想的なおはしょり【衽線を合わせる】

理想的なおはしょり【衽線を合わせる】

衽線が綺麗に合うとおはしょりは綺麗に見えます。

さとし
衽線は、着物を正しく着ることで自然と合います。
合わないということは、着付の何処かで無理が出ているということです。

理想的なおはしょり【1枚で】

理想的な理想的なおはしょり【1枚で】

おはしょりがボテっとならないようにするためには、おはしょりを一枚で作る必要があります。

着物好きマダム
そのためには、下前の上げた部分が帯の中に入るようにするのよね。

まとめ

✔︎おはしょりとは丈をちょうどいい長さに時に出る『折りたたんだ部分』
✔︎おはしょりは、『はしょる(かいつまむ)』からきている
✔︎歴史①対丈→引摺→おはしょり
✔︎歴史②明治くらいから一般的に
✔︎歴史③戦後、綺麗にすることが定着
✔︎理想のおはしょりは『5〜6センチ』『1枚で仕上げる』『衽線を揃える』

現在の着物の着姿は研究の結果、バランスが取れた非常に綺麗な形になっています。

さとし
それは着物の美しさでもあり、同時に着物を『やや着にくく』している側面もあるんですよね。
着物好き女子
ただ、やっぱり着物は綺麗に着たいのよね。

 

着物は『綺麗に着ないといけない』ではなく、『自由に着たい』から『綺麗に着たい』という順番がいいのかもしれません。

では、よき『きもの』ライフを(^^)y