着物に入れる紋の種類【『分からない』を47枚の画像で解決します】

着物の知識
●どうして着物に紋を入れるの?
●紋の入れ方にも種類があるって?

●紋には意味があるの?
●着物に紋って入れるべき?

着物に入れる紋、複雑だと思いませんか?

さとし
多くの人が着物の紋で悩んでいます。
この記事は、ちょっと難解な『紋』について、理解を深めてもらう試みです。

 

内容に入る前に、少しだけ私の自己紹介を…

さとし
私、さとし。
・着物の営業・販売を19年しています
・着物の店舗運営(店長歴)11年
・現在は着物の制作にたずさわっています。

 

この記事は以下の内容で話を進めていきます。

・紋を入れる『場所』とそれぞれの『意味』
・紋の格を決める『表現方法』
・紋って入れるべきか?を徹底検証
・自分の家のじゃない紋って使っちゃダメ?を考える
・家紋ギャラリーで、色んな紋を知る

 

この記事を読むことで、着物に入れる『紋の基本』が分かります。

着物好き女子
紋って難しいイメージがあるのよね。
さとし
ゆっくり読むと、それほど難しい内容ではありません
読み進めてみて下さい。

着物に使われる紋の種類【紋の意味を考える】

着物に使われる紋の種類【紋の意味を考える】

紋とは、その家や団体を表す紋章です。

さとし
着物に使われる場合は、『家族や親族への感謝と敬意』を表しているとされ、その着物の格を上げるとされています。

 

まずは、そんな紋の意味についてお話ししていきます。

【ポイント】紋を入れる場所とそれぞれの意味

着物に入れる『紋』は、最大で五箇所に入ります。

着物好き女子
それぞれに意味があるのよね。

背中の紋

紋①
さとし
紋の中心的存在で、一つ紋の場合はこの背中の紋を入れます。
着物好き女子
紋入れはここから始まるのね。

背中心の縫い目を渡って紋を付けます。

両袖裏の紋

紋③
さとし
三つ紋の場合は、背中と合わせてこの両袖裏に紋を入れます。

三つ紋は、一つ紋、五つ紋と比べると少ないです。

両胸の紋

紋②
さとし
5つ紋の場合は、背中と両袖裏と合わせてこの両胸の紋が入ります。
さとし
その全てが入る『五つ紋』は、その着物の格を最も上げるとされています。
着物好きマダム
黒紋付(喪服)や留袖などは五つ紋があるわよね。

 

着物好き女子
『三つ紋』は、今はあまり使われないって聞いたわ。
着物好きマダム
訪問着や色無地に『一つ紋』を入れることがあるわ。
カジュアルな着物でも、『一つ紋』をつけたりするわよね。
着物好き女子
母の色無地に刺繍の一つ紋が入っていたわ。

【補足】紋の大きさ

紋の大きさは男性が直径約3,8cm、女性が約2cmが標準となっています。

着物好き男子
男性の紋の方が大きいんですね。
確かにそのイメージがあるなぁ。

着物に使われる紋の種類【紋の作り方】

着物に使われる紋の種類【その作り方に迫る】

紹介した5つの場所に、何らかの方法で紋を入れていきます。

さとし
『紋の作り方』によって、格が変わります。

【格が決まる】紋の表現方法

紋の表現方法には2つの種類があります。

さとし
すなわち『日向紋』と『陰紋』です。

日向紋(ひなたもん)

紋のつくり
『細輪に木瓜(もっこう)』の染め抜き日向紋

 

日向紋とは、紋のモチーフ全体を白抜きにする紋の表現方法です。

さとし
格が高い紋の表現方法です。

 

『丸に梅鉢(うめばち)』の縫い紋の日向紋
さとし
同じ日向紋でも、刺繍(縫い紋)で表現するものもあります。
めずらしい紋の表現の仕方です。

陰紋(かげもん)

『蔦(つた)』の染め抜き中陰紋

 

陰紋とは、柄のモチーフ全体は地色の色で、輪郭線だけを白で染め抜きます。

さとし
略式の紋とされています。
上の写真の陰紋と、下の写真の日向紋を見比べて下さい。
同じ『蔦』の紋です。
『丸に蔦』の染め抜き日向紋(陰紋との比較)
着物好き女子
確かに陰紋と日向紋ではイメージが違いますね。
陰紋の方があっさりしてる感じだわ。

 

着物好きマダム
陰紋には、輪郭線の太さによって『陰』『中陰』『細中陰』『太陰』などの区別があるのよね。
『梅鉢(うめばち)』の染め抜き陰紋

 

『中陰木瓜(ちゅうかげもっこう)』の染め抜き蔭紋

【5つ】紋を入れる技法

続いては、紋を入れる技法についてです。

さとし
4つあります。

染め抜き紋

『丸に九枚笹(くまいざさ)』の染め抜き日向紋

染め抜き紋とは、紋の柄の部分を染め抜いて『白』になるようにする技法です。

さとし
一番格の高い紋の表現方法です。
染め抜き日向紋もあれば、染め抜き陰紋もあります。

石持ち入れ紋(こくもちいれもん)

さとし
石持ちとは上の写真のような、紋を入れる場所を白く抜いた部分を指します。
石持ち入れ紋は、石持ち部分に染めで紋を入れていくやり方です。
着物好きマダム
見た目には、染め抜き紋と同じになるのよね。
さとし
そうですね。
ただ、染め抜き紋より格が下がるとされています。
紋が入ることが前提とされている黒紋付や留袖は、このやり方で紋が入っていることが多いです。

 

『五三の桐(きり)』の石持ち入れ紋
さとし
石持ち入れ紋は石持ちに紋を入れるので、よく見ると石持ちの後が残っていたりします。
上の写真もよく見ると、それがわかります。
着物好きマダム
年月が経った着物は、それがよくわかるわよね。

染め紋

紋の柄自体を染めで描いていくやり方です。

さとし
石持ち入れ紋は染め紋になります。
他にも陰紋を直接、描く場合などもこれになりますね。

縫い紋

『三ツ松(みつまつ)』の縫い紋

紋の柄を刺繍で表現するやり方で、略式の紋となります。

さとし
主に訪問着や色無地など、格を上げたい場合に入れます。
大体は一つ紋で入れます。
縫い紋にも、柄を刺繍で表現する『日向紋』と、柄のふちを刺繍で表現する『陰紋』があります。
この『三ツ松』は陰紋となります。

貼り付け紋

あらかじめ染めた紋の生地を、貼り付けるやり方です。

さとし
自分の入れたい紋を選べたり、それを替えたりできるってことですね。

着物のレンタルなどで、このやり方を使ったりします。

【これが分からない】紋って入れるべき?

着物好き女子
着物に紋って入れるべきなんですか?
さとし
結構悩むポイントですよね。
順番に考えていきましょう。

黒紋付や黒留袖には紋は入れるべき

さとし
黒紋付や黒留袖には紋は入れるべきで、紋が入ることを前提に作られています。
着物好きマダム
それはそうね。
黒紋付や黒留袖は、石持ちがあることが多いから、紋を入れるのが普通だわ。
でも色留袖は微妙なのよね。
さとし
色留袖は格式の高い場面で着られるので、紋を入れることが多いです。
ただ、紋がないと着れないというわけでもありません。

それ以外の着物には紋って入れるの?

さとし
訪問着や付下、色無地などは紋を入れるか微妙なラインです。
着物好きマダム
染め抜き紋を入れるか、縫い紋にするかでも悩むのよね。

 

さとし
着る場面がフォーマル用途が多いなら、紋を入れることを考えてもいいですね。
着物好きマダム
お稽古事で着るなら、紋を入れる場合が多かったりするわ。
さとし
最近はカジュアルダウンしている席が多いので、紋は入れない人が増えているのも事実です。

 

いずれにせよ、こういった着物は一つ紋を入れるのが一般的です。

着物好きマダム
色無地なら縫い紋にするかな。

自分の家の紋じゃない着物を着てもいいの?

着物好き女子
リサイクルで買った色無地に紋が入ってたんだけど、自分の家の紋じゃないものを着てもいいの?
さとし
実際、その紋があなたの紋でないとわかる人って、身内かよっぽど親しい人くらいなんですよね。
着ていく場面にもよりますが、そこまで気にしなくてもいいと思います。
紋は取ったり、入れ替えたりすることもできます。
どうしても気になるなら、それを検討してみて下さい。

 

さらに紋には通紋と呼ばれる、誰でも使える紋もあります。

さとし
代表的な通紋は以下の通りです。
着物好き女子
これらの紋だったら、さらに気にしなくていいのね。
着物好きマダム
レンタル着物に入っている紋は、これらのどれかが入っているわ。

着物に入れる紋の種類【色んな紋をご紹介】

さとし
ここからは色んな紋を紹介していきます。

 

『沢潟(おもがた)』の石持ち入れ紋
植物のオモダカを図案化した紋、十大家紋に数えられる。
オモダカの葉の形状が矢の鏃に似ている為、「勝軍草」と呼ばれ、武家の家紋として広く使われた。

 

『梅(うめ)』の染め紋
梅の花を写実的に形どった紋、菅原道真が祀られる天満宮の神紋としたのが始まりとされる。

 

『三割梅鉢(みつわりうめばち)』の縫い紋

 

『三ツ反り日の丸扇子(みつそりひのまるおうぎ)』の染め抜き日向紋
扇は形が末広で吉兆を表す。

 

『根笹(ねざさ)』の縫い紋

 

『丸に九枚笹(くまいざさ)』の染め抜き日向紋

 

『糸輪に陰抱き茗荷(いとわにかげだきみょうが)』の染め抜き陰紋

 

『撫子(なでしこ)』の染め抜き日向紋

 

『花角(はなかく)』の染め抜き日向紋

 

『丸に桔梗(ききょう)』の陰紋

 

『丸に三ツ柏(みつかしわ)』の染め抜き日向紋

 

『丸に三ツ柏(みつかしわ)』の縫い紋

 

『桔梗(ききょう)』の染め抜き日向紋

 

『剣方喰(けんかたばみ)』の染め抜き日向紋

 

『丸に八曜(はちよう)』の縫い紋

 

『花菱(はなびし)』の縫い紋

 

『丸に揚羽蝶(あげはちょう)』の縫い紋

 

『左三ツ巴(ひだりみつどもえ)』の染め抜き日向紋

 

『檜扇(ひおうぎ)』の縫い紋

 

『丸に笹龍謄(ささりんどう)』の縫い紋

 

『蔦(つた)』の縫い紋

 

『丸に四ツ目(よつめ)』の染め抜き日向紋

 

『丸に橘(たちばな)』の縫い紋

 

『丸に三ツ矢(みつや)』の染め抜き日向紋

 

『丸に右離れ立ち葵(みぎはなれたちあおい)』の石持ち入れ紋

 

『中陰五三の桐(ちゅうかげごさんのきり)』の染め抜き陰紋

 

『中陰五三の桐(ちゅうかげごさんのきり)』の縫い紋

 

『丸に一ツ引(ひとつひき)』の石持ち入れ紋

 

『細輪に三ツ引(みつびき)』の染め抜き日向紋

 

『丸に井桁(いげた)』の縫い紋

 

『蔓柏(つるかしわ)』の染め抜き日向紋

 

『丸に松皮菱(まつかわびし)』の縫い紋

 

『下がり藤(さがりふじ)』の染め抜き日向紋

 

『鶴の丸(つるのまる)』の縫い紋

まとめ

☆この記事で話したこと☆
✔︎背中の紋は『ご先祖様』、両胸の紋は『両親』、両袖の紋は『兄弟姉妹』
✔︎日向紋→柄を染め抜く・陰紋→柄のふちを染め抜く
✔︎染め抜き紋→柄を染め抜く技法・染め紋→柄を染める技法・縫い紋→柄を刺繍で表現する技法・貼り付け紋→紋を描いた生地を貼り付ける

 

では、よき『きもの』ライフを(^^)y