

着物屋さんは基本的に『女性』をターゲットにしています。
そして、着物の種類も女性の方が多いのも事実です。
これを説明するためには、少し着物の歴史を掘り下げないといけないんです。
それも踏まえてこの記事では『男性の着物の種類』について、お話ししていきます。
内容に入る前に、少しだけ私の自己紹介を…

・着物の営業・販売16年
・着物の店舗運営10年(店長歴)
・現在は着物の制作にたずさわっています
この記事では以下のことがわかります。
②男性着物の種類
③男性着物のつくり方

着物を着たい男性が増えてきてるんですよね。
これは、着物の販売の現場でも強く感じます。
そんな男性着物の世界を是非、知ってみて下さい。
目次
着物の種類【男性着物の歴史】


これを知ることで、何故、男性用の着物が女性用のそれと比べて少ないかが理解してもらえると思います。
明治時代が始まり、日本は西洋の文化を取り入れるようになりました。
色んな西洋の文化が入ってきますが、その中で『洋服(洋装)』も入ってくるんですよね。
特に官公庁の正装は『洋服』になりますし、外国の人をもてなすための社交着としての『洋服』も入ってきます。

当時は、社会に出るのは基本的に『男性』でした。
なので、男性の方が先に『洋装化』がすすみます。
これに対して、女性は『洋服』を着る機会があまりなかったんですよね。
この流れが、『男性は洋装』『女性は和装』という名残になります。
今の結婚式でも、お父さんは『燕尾服』でお母さんが『留袖』を着たりしますよね。

そんなことで『フォーマルの場面で着物を着ることが多い女性』には、それに合わせて『着物の種類(フォーマル)』が多くなります。
②留袖
③訪問着
④付下
⑤色無地など
男性着物のフォーマル(礼装)は基本的に『紋付』しかありません。
さらに着物の柄も女性用のほうが多岐に渡るので、種類も数も『女性用の着物』のほうが多くなっていったんです。
着物の種類【男性の着物ってどんなものがあるんだろう?】

数は少ない男性着物ですが、最近は『男性着物』にもブームがきています。
着物を着ている(着たい)男性が増えています!
ここでは、男性着物の種類を解説します。
紋付羽織袴(もんつきはおりはかま)

男性着物の最礼装が『五つ紋の黒紋付羽織袴』です。
黒地の着物に、黒地の羽織、仙台平(せんだいひら)の袴で、ワンセットです。
そして着物と羽織に『5つ紋』が入っています。
お相撲さんの優勝パレードや、歌舞伎や落語などの伝統芸能の襲名披露などでも着られていてよく見ますよね。
この男性の最礼装は、結婚式などのおめでたい席でも着ますが、お葬式でも着ることができます。
礼装
黒以外の色で、紋付着物に羽織袴のスタイルは男性着物の礼装(略礼装)になります。
落語家さんや、正月の特番で芸能人の司会の方が着ていたりします。
こういう後染めの無地が男性の礼装になりますが、そもそもフォーマルの席で男性が着物を着ることがあまりないので一般的とはあまり言えません。
礼装と言うより『舞台衣装』というほうがいいのかもしれません。
お召(おめし)
お召というのは江戸幕府11代将軍・徳川家斉が好んだことからその名がつく絹織物です。
女性が着る着物にも『お召の着物』はたくさんあります。
その名前の由来と、お召は『粋』イメージの着物が多いので男性着物のとしても愛用されています。
紬(つむぎ)

紬は女性着物でも普段着ですが男性着物でも普段着になります。
そして羽織を着用すれば軽めの社交着にもなります。
上の写真は『大島紬』の男性着物です。(ちなみに私の着物です)
大島以外にも、いろんな紬を男性着物として着て頂けます。
紬は幾何学模様や無地のものが多いので、男性着物として使いやすいですよね。
広がる男性着物
『女性の着物』と『男性の着物』は仕立て方が違うだけで、基本的には同じ反物からつくられます。
最近のおしゃれ男子は、『数多くある女性用(女性が着用すると想定されている)の着物』を男性用に仕立てて着用しています。

ちなみにこの写真の着物は僕の着物ですが、女性の『カジュアル色無地』として売られていたものを男性用に仕立てたものです。
ちなみに帯も『女性用の袋帯(ふくろおび)』を『男性用の角帯(かくおび)』に仕立て直してつくっているんですよね。
だから男性着物には可能性が広がっていますし、着物で個性を打ち出すこともできるんです。
男性着物の作り方【男性着物と女性着物の違い】

先ほど、「『女性用(そう想定されてる)の反物』を男性用に仕立てることができる」と言いました。
ということで…

この疑問に答えていこうと思います。
男性着物の形
男性用も女性用も同じ反物からできるのですが、『でき上がりの形』に違いがあります。
代表的な2点を説明します。
着物の丈の違い
まずは着物の『身丈の長さ』に違いがあります。

女性は着丈を長めに作って、『おはしょり』で調整します。
対する男性着物は『つい丈』といって、身長(肩から裾まで)からその長さを決めます。
なので、女性用の着物はある程度の身長の差に関わらず着用ができますが、男性用はその人に合った長さで作るんですよね。
互換性が低いのが男性着物です。
このことが『既製の男性着物』を売りにくい要因にもなっています。
身八つ口のあるなし
女性の着物は『身八つ口』といって脇が開いています。
対して、男性の着物は開いていません。
→女性の着物は衿(えり)が締まっているので通気性が悪く、脇を開いているんです。
・もう一つは女性はその昔、身八つ口から子供に授乳をしていたので、その名残なんです。
反物の寸法が足りない場合
反物から男性着物をつくる場合に、重要となってくるのが裄(ゆき)が出るかということです。
裄というのは『背中から肩を通って手首まで』の長さです。
ワイシャツを買う時も手の長さを測って選びますが、短いのってダメですよね。
『女性用(それに想定された)』の反物では、男性のサイズが出ない可能性があるんですよね。

そういう場合は、袖の手首側に足し布をします。
そうすることによって、裄の長さをカバーできるんですよね。
まとめ
ということで、男性着物についてお話ししてきました。
着物は『着る機会がない』というのが、ネックになります。

そんな時に、『カップルで着物を着る機会』があれば、もっと着物を楽しめる機会が増えるかも知れません。
だから男性にももっと着物を気軽に楽しんで欲しいんですよね。
着物人口のさらなる増加は男性の行動にかかっているのかもしれません。
では、よき『きもの』ライフを(^^)y