

その前に、少しだけ私の自己紹介を…

・着物の営業・販売16年
・着物の店舗運営10年(店長歴)
・現在は着物の制作にたずさわっています
『着物(=特に女性の着物)』にはたくさんの種類があります。
今回はその一つ一つを解説していきます。
目次
着物の種類【フォーマル編】

まずはフォーマル着物の種類を説明していきます。
黒紋付

着物の中では最も『格』が高いのがこの『黒紋付』になります。
全体が真っ黒で、上半身に『5つの家紋』があります。
この家を『背負ってフォーマルの場面に出る』というのが、日本的な発想ですよね。
いわゆる『ブラックフォーマル』になります。
お葬式での着用が多い(ほぼこれしかない)のですが、最礼装なので帯次第ではフォーマルな場面でも着ます。
ただ『お葬式での着用』がメインになることから、『喪服』とも呼ばれたりします。
宝塚音楽学校(タカラジェンヌを育成する学校)の卒業式は、この『黒紋付』に緑の袴をはくのが伝統です。
このエピソードでもわかりますが、『黒紋付』はおめでたい時で着る『フォーマルの着物』なんですよね。
男性の場合は、『羽織と袴』をセットアップします。

お相撲さんが優勝した時や、歌舞伎役者の襲名披露の挨拶なんかで、着ているのを見ることがありますよね。
男性の場合も、最礼装としての位置づけになります。
留袖
留袖は『黒留袖』が一般的ですが、黒以外の色の留袖もあります。
柄の構成は、裾(裾周り)に柄があり、上半身には柄はありませんが、5つの『家紋』をいれます。
黒留袖

結婚式にお母さん(近しい既婚の親族の女性)が着ています。
フォーマル全般に着ることができますが、今は『結婚式(披露宴)』での着用がほとんどです。
というより、それ以外でみかけることはほとんどありません。
場面が限定されているので、裾の柄はおめでたい柄を入れる場合がほとんどです。
しかも結婚式は『春夏秋冬』のいつになるかが予測ができないので、季節の花々をたくさん取り入れている柄が多いんですよね。
色留袖

黒以外の色の留袖を色留袖といいます。
社交着としてはトップクラスの『格』になります。
色留袖も一世一代のイメージがあり、『園遊会』なんかで着たりします。
『園遊会』はドレスコードが用意されていて、『色』も指定されたりするみたいです。
振袖

格は留袖と一緒なのですが、
『振袖は未婚の女性』
というのがルールです。
『振袖』は、そんな未婚の女性が主役のイベント『成人式』のメインアイテムです。
ただ二十歳を迎える前に『結婚・出産』する人もいますが、『振袖』を着るのが一般的です。
ちなみに『成人式』は、ルールの上では『振袖』ではなく、他の種類の着物でも問題はないんですね。
極端に言ったら、黒紋付(いわゆる喪服)を着て、『成人式』に行っても問題はありません。
そんな極端な人はなかなかいませんが、訪問着や色無地に袴をはいて『成人式』に行く人はいたりします。
訪問着

『訪問着』は、上半身にも柄があります。
これが『留袖(=色留袖)』との見分け方になります。
着物は形は一緒で、『柄の配置』によって『種類』が変わります。
『留袖は下半身(裾周り)だけ、訪問着は上半身にも柄がある』と覚えるといいです。
『訪問着』は基本的にフォーマルです。(読んで字のごとく訪問=ご挨拶まわりの為に着るんですね。)
ただ『訪問着』の色や柄は様々です。
洋風な柄もあります。
留袖・振袖と違い、既婚未婚に関わらないので、お嫁入り道具に訪問着を揃えたりします。
フォーマルの場面は広いし、多様性があるので『着やすい着物』と言えるのが『訪問着』です。
付下
これを説明するのは大変難しいです。
訪問着よりも一格下の着物になりますが、柄の配置は訪問着と同じです。
『柄の分量が訪問着ほどではない』、『売りに出されている状態が反物』という特徴がありますが、仕立て上がると訪問着との見分けはつきません。
着物もこんな感じで、細かい種類があるんです。
『付下』は、着物種類革命で重要な位置付けにされた『着物』です。
色無地
柄の無い無地の着物です。
『主賓をたてるおもてなし精神のお茶の世界』では必須アイテムとされています。
背中に一つの家紋をつけると、『訪問着』格にクラスチェンジするという要素も持ってます。
『色無地』は昨今、劇的な変化をしています。
様々なバリエーションの地紋があり、カジュアルめいた色無地がどんどん増えてきています。
『無地小紋』と名付けられたりしています。
シンプルって人気がありますよね。
コーディネート幅が広いという要素もあるので、帯次第で『様々なシーン』に着れたりします。
今後、もっと注目される着物の種類だと個人的には思っています。
着物の種類【カジュアル編】

次にカジュアルの着物の種類を紹介します。
小紋

小紋の柄の配置は『全体』になります。
『全体』的に柄があるのが『小紋』ですし、柄というより『模様(=染でのボカシなど)』が全体的にあるのも小紋です。
なので、小紋の形態は多岐に渡ります。
全体的に大きな柄がある『小紋』と、飛び柄になっている『小紋』では、その印象は全然違います。
やはり、『カジュアル』になるので範囲が広いんですよね。
紬

カジュアルの究極が『紬』です。
『紬』は作り方が違います。
これまでの着物は白生地に色柄をのせて(=染めて)いくんですが、『紬』は糸自体を染めて織り上げます。
『先染めの着物』といいます。
紬は元々は野良着(庶民着)であったため、地方ごとに色んな『紬』が存在します。
なので『紬』は地域ごとに多種多様性があるので、一概には説明不能です。
イメージでいえば、小紋は『ワンピース』紬が『ジーパン』みたいな感覚です。
まとめ【着物の種類の未来】
『カジュアル着物』は、カジュアルというだけに多様性があり一概には説明は不可能です。
これには『商売の要素(つまり流行・時流)』が絡んでいるんですよね。
『留袖』や『振袖』は1着あればいい『衣装としての着物』ですが、『カジュアル』には終わりがありません。
もっと広がる着物の種類
着物の種類(TPO)を並べてきましたが、着物はこの枠には収まりきるものではありません。
例えば…『紬』の素材的な要素を満たしながら、訪問着のような柄づけの『紬』もあります。
『左半身(着物において左側は前)』だけに柄がある、『付下』と『小紋』の中間みたいな着物もあります。
『色無地』でありながら、地柄のインパクトで『小紋』に近い着物もあります。
キリがないんです。
作り手も『新しいジャンル』を世に出したいという思いがあるので、どんどん種類が多様化しているんですね。
この流れはこれからも進んでいきます。
もしかしたら、その後にはついに形状の変化もあるのかもしれません。
ノースリーブの着物が出てくるかもしれません。
というかもうありますね。
『アイドル』とかが『衣装』で着ていたりします。
今は『衣装』ですが、それが『定番化』することはよくある話です。
それが『個性』なんですよね。
どんな『着物』が自分にあってるか

これに対する『答え』はなくなってきました。
なぜなら着物はファッションだからです。
『ルール』ではなく、『自分らしさ』が求められるようになってきています。
ルールの中で着物を選ぶのではなく、自分にあった(似合っているという意味でも)着物を選ぶことが大切ですし、楽しむコツです。
それが着物の『新しいルール』なのかもしれません。
だからもっと気軽に着物を楽しめばいいし、そうやって着物が広がっていけばいいと思っています。
では、よき『きもの』ライフを(^^)y