着物の種類『大島紬』【特徴・TPO・柄のあれこれを画像32枚で分かりやすく】

着物の知識
●大島紬の特徴とは?
●大島紬の泥染ってどんな技法?
●大島紬のTPOって?
●大島紬のマルキってなに?
●大島紬ってどんな柄が使われているの?

大島紬といえば『着物に詳しくない人でも聞いたことがある』、ある意味最も有名な着物です。

さとし
そんな大島紬の特徴とTPOを知っていただくのが、この記事の試みです。
大島紬の魅力と、隠された真実をお楽しみ下さい。

 

内容に入る前に少しだけ、私の自己紹介を…

さとし
私、さとし。
・着物の営業・販売を19年しています
・着物の店舗運営(店長歴)11年
・現在は着物の制作にたずさわっています。

 

この記事では、以下の項目について解説をしています。

・大島紬は1300年以上前からある
・伝統工芸品の大島紬と認定される5項目がある
・大島紬の代表的な技法である泥染めついて
・大島紬の柄の細かさについて
・写真で楽しむ大島紬の柄
・大島紬って実は『紬』じゃない!?

 

この記事を読むことで、大島紬の基本的な知識と魅力を知ることができます。

読み進めて確認してみて下さい。

着物の種類『大島紬』【起源と特徴】

着物の種類『大島紬』【起源と特徴】

大島紬は、主に鹿児島県奄美大島でつくられる、織りと染めの着物です。

 

さとし
その歴史は古く、約1300年前(734年)に奈良東大寺の献物帳に『南方から赤褐色の着物が献上された』という記述があります。
つまりその頃から、大島紬の特徴である『泥染』の文化があったと言われています。

歴史の流れとともに、今の大島紬の工程が確立され1975年に国の伝統的工芸品に指定、生産高のピークを迎えます。

さとし
現在は生産高こそ落ちたものの、着物の女王としての確固たる地位を築いているんですね。

大島紬の特徴【重要工程の説明】

さとし
大島紬は以下の5項目を満たすことで、『伝統工芸品大島紬』の証書が与えられます。
①絹100%である
②先染め手織りである
③平織りである
④締機(しめばた)にて絣の加工をしている
⑤手機で織り上げている

内容を詳しく解説します。

絹100%である

大島紬が高級であり、多くの人に愛される所以がここにあります。

さとし
大島紬は経糸、横糸ともに生糸を使って織り上げられています。

先染めである

さとし
先染めとは、『糸を染めて織っている』という事です。
着物好きマダム
対して『後染め』は、白生地を作り染め等で柄をいれるやり方ね。

 

画像の着物は『後染め』の訪問着
白い生地をベージュ系の色に染め、様々な技法を用いて柄を描いています。

平織りである

さとし
『平織り』というのは、経横の糸が一本づつ浮き沈みする、基本的な織り方を指します。
上の画像は大島紬ではありませんが、経横の糸が一本づつ浮き沈みしている様子がわかります。
これが『平織り』です。

 

着物好きマダム
対するは『綾織り(あやおり)』ね。

締機にて絣(かすり)の加工をしている

さとし
大島紬は『先染めの糸』を染める時に、『染め抜くところ』を綿の糸で織り上げます(締め上げる)。

この工程を『締機(しめばた)』といい、できたものを染めほどきます。

さとし
こうしてできる糸が『絣系(かすり)』です。

 

そして、柄をあわせて織り上げます。

着物好きマダム
大島紬が、2度織おられると言われる所以ね。

手織りで織り上げている

さとし
読んで字のごとくオートメーションではなく、織機を使って人の手で織り上げます。

大島紬を最終的に織り上げるのは、女性の方です。

 

着物好きマダム
『大島紬』にどことなく優しさがあるのは、女性が織るからなのかもしれないわね。

 

大島紬『龍郷柄』を織る様子

大島紬の特徴【泥染めってどんな技法?】

さとし
様々な特徴のある『大島紬』ですが、代名詞となる技法に『泥染め』があります。
すべての『大島紬』が泥染めで作られているわけではありません。
なので、先ほどの伝統工芸品と認定される5項目に泥染めは入っていません。

 

泥染めは天然の染色方法です。

着物好き女子
どういう染め方なの?
さとし
車輪梅(シャリンバイ)と呼ばれる植物を煮立てた煮汁と、奄美大島の『泥』で交互に染めていきます。
それによって糸が化学反応で、光沢のある『黒』に染め上がります。

 

車輪梅(シャリンバイ)を煮立てている様子
奄美大島ではテーチ木と呼ばれ、タンニンを含んでいて奄美の泥と化学反応を起こします

 

泥染めの様子
火山活動が活発であった奄美大島では、土壌に鉄分が多く含まれ、その鉄分が車輪梅のタンニン酸と化学反応を起こし、黒褐色に染まります。

 

着物好き女子
まさに自然と自然が融合した着物ね。

大島紬は絣の細かさで価値が決まる

大島紬は柄がある経糸と横糸が組み合わさり、全体の柄になります。

さとし
経糸・横糸の両方、柄がある糸(柄糸)と柄のない糸(地糸)があり、柄糸が多いほど全体的に細かくとなります。

 

着物好き女子
その柄糸を合わせて織るってすごく大変そう…

絣の表現方法

さとし
絣の表現の仕方は様々ですが、まずは『片ス式』『一元式』『割り込み』をご紹介します。

 

片ス式とは…
経絣糸1本と横絣糸2本の合計3本で絣模様を出す方法
T字の絣に見えます
一元式とは…
経絣糸2本と横絣糸2本の合計4本で絣模様を出す方法
手裏剣のような形の絣になります
割り込み式
上の二つの表現方法を組み合わせたやり方で、立体的で複雑な絣になります

『マルキ』絣の細かさを表す単位

大島紬は通常、経糸が1240本で構成され、そのうち80本が両耳端です。

この耳端に40本の糸があり、両サイドで80本になります

 

さとし
この1240本から両耳端の80本を引いた1160本の経糸の中に、どれだけの絣糸があるかを表すのが『マルキ』です。
つまりマルキ数が多いほど、絣の柄が細かくなるんですね。

マルキには『5マルキ』『7マルキ』『9マルキ』があり、それぞれ…

5マルキ=464本
7マルキ=580本
9マルキ=772本

の絣糸(かすりいと)が、経糸に入ります。

 

着物好きマダム
12マルキの大島紬って聞いたことがあるけど、それってどういう物なの?
さらに経絣糸が多く入ってるってこと?
さとし
12マルキ以上の大島紬は、経糸の総本数を1240本以上にします。
それによって経絣糸の本数を増やすんですね。
通常より細い糸を使うことで、より細かいマルキ数の大島紬が作れるようになりました。

着物の種類『大島紬』【そのTPO】

着物の種類『大島紬』【そのTPO】
さとし
大島紬はもとより、紬のTPOはカジュアル用途です。
普段着として楽しむ着物なんですよね。

洋服に例えるなら『デニム』のような感覚です。

着物好きマダム
高級な大島紬を、普段着として着るって、最高の贅沢なのよね。

 

奄美大島の伝統工芸品である大島紬は、地元では特別な意味があり、大島紬で作られた振袖もあります。

着物好き女子
振袖って言えば、礼装の着物ですよね?
大島紬でそんなのもあるんだ。
さとし
一般的なものではありませんが、地元ならではの話なんですよね。

大島紬には訪問着も存在する

さとし
大島紬はその素材の種類であり、着物としては先ほど言った『振袖』だったり、絵羽状に仕上げた訪問着も存在します。
着物好きマダム
そうなんだ。
大島紬の訪問着ってどんなところで着るのかしら?

 

さとし
素材が大島紬なのでカジュアル要素が強いのですが、袋帯などを締めてちょっとしたお祝い事にも着られたりするんですよね。
着物好きマダム
デニムパンツにジャケットを羽織っている感覚ね。

着物の種類『大島紬』【その柄の様々を写真で解説】

着物の種類『大島紬』【その柄の様々を写真で解説】
さとし
大島紬には様々な柄があります。
その柄には奄美大島の風土と関わりあるものもあります。

ここでは、そんな大島紬の柄を写真で解説していきます。

大島紬2
泥染めで染めた菱柄の大島紬

 

大島紬3
龍郷柄、龍郷町が名前の由来となるハブ(へび)をモチーフとした柄
コチラも龍郷柄の大島紬
同じ龍郷柄でも、イメージは様々です。

 

大島紬4
藍泥の大島紬

 

大島紬
流水柄の大島紬

 

白大島
麻の葉柄の白大島紬。

 

大島紬
泥染めの十字かすりの大島紬。

 

大島紬
市松模様の大島紬

 

大島紬
亀甲柄の白大島紬。

 

大島紬
縦縞の機械織りの大島紬。

 

大島紬
いろんな花々の大島紬。

 

市松の大島紬
市松柄の大島紬。

 

十二マルキと呼ばれる、非常に細かい絣の大島紬

 

白大島紬
泥染めの黒褐色のイメージが強い大島紬ですが、白泥という染料を使って白地に染める大島紬もあります。

 

こういったグリーンの色などは、締機のをした後に、染料を刷り込んでいくことで色を出します。

 

蝶の柄の大島紬

 

絣の細かい泥染めの大島紬

 

麻の葉柄の大島紬

 

泥染めの大島紬

【真実】大島紬は『紬』ではない

さとし
実は大島紬は『紬』ではありません。
着物好き女子
えっ!?

 

本来紬とは、『紬糸』を使います。

紬糸とは…
蚕が作った繭からは生糸が紡ぎ出されます。
繭の中で、不要となるはずの生糸にならない部分を、煮立て糸状にしたものが紬糸です。

 

紬糸は形が歪であったり、節があったりします。
そんな糸で織り上げる生地を紬といいます。

さとし
大島紬は紬糸を使わずに、経系・横糸両方に生糸を使います
なので、大島紬ではなく『大島絣』と呼ぶ方が自然なんですよね。
着物仙人
かつては紬糸を使って、作っていた大島紬もあったのじゃ。
今の大島紬が爆発的にヒットして、あまり姿を見なくなったのぉ。

 

まとめ

着物には『大島紬』だけでなく、『地域』や『環境』に合わせて作られているものが、たくさんあります。

それを感じながら着るのも、着物の楽しみと醍醐味です。

さとし
是非、そんなワンランク上の『きもの街道』を突き進んでくださいね。

 

では、よき『きもの』ライフを(^^)y