内容に入る前に、少しだけ私の自己紹介を…
・着物の営業・販売を19年しています。
・着物の店舗運営(店長歴)11年
・現在は独立し、着物の制作にたずさわりながら、全国各地で着物の提案活動をしております。
生糸を引き出せない品質の『くず繭(本来は捨てる繭)』を真綿にし、糸をつむぎ出したものが紬糸で、その紬糸によって(または一部に)織られたものが紬です。
その風合いを楽しむ人の増加により、商売衣類としての価値が高まり、様々な産地の技術と合わせてブランド化しているんですよね。
なので紬はその産地の特性を活かしながら、非常に多くの種類があります。
この記事では、そんな多種多様な紬を一覧にし、画像と共に解説していきます。
【紹介する紬】
●大島紬●結城紬●牛首紬●米沢紬●塩沢紬●小千谷紬●黄八丈●読谷山花織●信州紬●久米島紬●土佐紬
・紬のTPOについて
この記事を読むことで、持っている紬の種類を確認できるとともに、紬についての幅広い知識を得ることができます。
紬の世界を楽しむ読み物としても、本記事をお使いください。
目次
【画像あり】紬の種類を一覧で解説
それでは紬の種類を解説していきます。
大島紬【その特徴と見分け方】
大島紬は、鹿児島県(主に奄美大島)の伝統工芸品として作られる織物です。
和箪笥があるような家庭では、必ずといっていいほど大島紬があるものなんですよね。
テーチ木と呼ばれる木の樹皮で煮出した汁と、鉄分を多く含んだ泥土に交互につけて、染めていきます。
染める前に、絹糸を木綿で挟み込み防染することによって、絣を作ります。
そしてその絣を合わせることによって、柄ができ上がるんです。
色調や柄の多様化が進んでいます。
大島紬といっても全てが手織りで作られているわけではなく、機械で織られているものもあります。
そういったものは値段も安価なんですよね。
大島紬ギャラリー
大島の風合いと、染め柄のおしゃれ感を楽しむことができます。
韓国産大島紬
韓国経済の成長と、そもそもの大島紬の生産数の減少により、その姿は今では一部でしか見られません。
結城紬【その特徴と見分け方】
茨城県や栃木県を主な生産の場とする絹織物です。
国の重要無形文化財、そしてユネスコの無形文化遺産のリストに登録されています。
大島紬と並ぶ、有名で人気のある紬なんですよね。
その中でも重要無形文化財に指定される要件としては…
・使用する糸はすべて真綿より手つむぎした撚りの掛からない無撚糸を使用すること
・絣模様を付ける場合は手くびりによること
・地機で織ること
この3つの要件を満たすもが、重要無形文化財の結城紬となります。
結城紬はその風合いが非常に愛好され、着れば着るほど身体に馴染んで着やすくなると言われています。
結城紬ギャラリー
牛首紬【その特徴と見分け方】
主に石川県白山市において生産される紬織物です。
非常に生地が丈夫で『釘が抜けるほど』ということから、釘抜紬(くぎぬきつむぎ)と呼ばれたりもします。
玉繭の糸は何本もの繊維が絡みつくために節(ふし)ができるんだけど、それが牛首紬の特徴となっています。
現にこの牛首紬に関しては、言う人によっては3大紬から外れることもあるのです。
牛首紬ギャラリー
米沢紬【その特徴と見分け方】
山形県の米沢盆地周辺で作られる紬織物になります。
その米沢織の中で様々な技法で作られているのが米沢紬となるんです。
長井町周辺で生産されることから長井紬と呼ばれたり、米沢置賜地方で織られるものを置賜紬と呼ばれたりもします。
他にも白鷹紬、米琉紬などの呼び方も合わせて、米沢紬とされています。
置賜紬ギャラリー
ぜんまい紬
米沢紬から発祥した紬の中にぜんまい紬もあります。
山菜として使われるぜんまいの綿をつむいで、よこ糸として織り込んでいるぜんまい紬、元々は捨てる予定のクズ繭すら手に入らない、農家の人たちの手によって生み出されました。
ぜんまい紬はふんわりとした風合いで、生地同士が絡みやすくもあるため、単衣で仕立てると裾さばきが悪いという特徴もあります。
塩沢紬【その特徴と見分け方】
新潟県魚沼市周辺で作られる紬織物です。
新潟県の冬は厳しく、塩沢地方は長かったら半年以上も雪に埋もれていると言われます。
そんな環境の中でじっくり織物を作ってきた習慣が塩沢紬の特徴となっているんです。
この塩沢紬が牛首紬に取って代わって3大紬の一つと言われたりもしますが、前述のようにそれは売り手の戦略であったりもするんですよね。
日本の代表的な柄を塩沢で楽しめる、そんな着物です。
小千谷紬【その特徴と見分け方】
小千谷紬とは、新潟県小千谷市周辺で作られる紬織物で、後述する小千谷縮と越後上布の技術を取り入れ作られています。
小千谷縮
小千谷紬とよく似た名前ですが、こちらは麻織物になります。
新潟県の小千谷市周辺を生産地とする麻織物で、苧麻(カラムシ)という植物を使って作ります。
・すべて苧麻を手うみした糸を使用すること
・絣模様を付ける場合は、てくびりによること
・いざり機で織ること
・しぼとりをする場合は、湯もみ、足ぶみによること
・さらしは、雪ざらしによること
そして、さらにユネスコの無形文化遺産にも登録されています。
片貝木綿(かたがいもめん)
片貝木綿は、小千谷市片貝町で作られる木綿の織物です。
昭和20年代の『民藝運動』一環として全国を回る一行の目に留まり、独自の織物を作り始めます。
おしゃれで品揃え豊富な、きもの初心者でも安心のお店です。
黄八丈【その特徴と見分け方】
黄八丈は、八丈島に伝わる草木染めの絹織物です。
島に自生する植物の煮汁で、黄色(コブナグサ)、鳶色(タブノキの樹皮)、黒(椎の木の樹皮)に染められた糸を織り上げ、縞模様や格子模様を作ります。
可愛らしさを感じるわ。
読谷山花織【その特徴と見分け方】
読谷山花織(よみたんざん-はなおり)は沖縄県中頭群読谷村で作られる織物です。
先染めされた糸で、花のような幾何学模様の紋様を織り込んでいるのが特徴です。
花織の模様には基本的な単位の図柄が決まっていて、それぞれに意味があります。
基本となる『花』模様には以下のものがあります。
銭花(じんばな)
お金をかたどった模様
富を得られる願い
扇花(おーじはな)
扇をかたどった模様
末広がりに広がる扇のように子孫繁栄の願い
風車花(かじまやーばな)
風車をかたどった模様
97歳になると風車を配る風習から、長寿への願い
明治の廃藩置県で王族や貴族の身分が廃止になり、読谷山花織自体も衰退していきます。
一部の愛好家によって技術を復活させようとする動きがあり、今は希少な織物として人気があります。
信州紬【その特徴と見分け方】
信州紬は長野県全域で生産される紬織物で、伝統工芸品として国から指定されています。
生産する地域によって『上田紬』『飯田紬』『松本紬』『伊那紬』などと呼ばれ、これらの総称が信州紬となります。
長野県に自生する植物を使った草木染めを主流とし、さらには『山繭(野生の蚕)』を使用するものもあります。
上田紬【その特徴】
長野県上田市は古くから養蚕が盛んで、そこで織られる紬を上田紬と言います。
上田紬は経糸を絹糸、横糸に紬糸を使います。
▼ブログ筆者が上田紬の産地の様子を撮影した動画▼
久米島紬【その特徴と見分け方】
久米島紬とは沖縄県島尻郡の久米島で織られる紬で、その製作技術は国の重要無形文化財に指定されています。
その工程は基本的に一人の織子が行います。
そのため、非常に希少性の高い紬でもあるのです。
久留米絣【その特徴と見分け方】
久留米絣とは、福岡県久留米市周辺で作られる絣で、綿織物になります。
その技法は国の重要無形文化財に指定されています。
糸を染めてから織ることによって、柄の輪郭がズレてにじんだようになり、それが久留米絣の独特の風合いを生み出しています。
土佐つむぎ【今は製造されていない綿織物】
土佐つむぎとは、高知県香美郡の綿織物です。
土佐つむぎはモンペなどの丈夫な実用品として、たくさん売られていました。
紬のTPOについて
そういった意味では紬は究極のおしゃれ着と言えるのよね。
だって、伝統工芸をまとうんだから…
普段着なのでその着こなし(コーディネート)については、自由度が非常に高いのも魅力の一つになります。
『その紬に合う』という条件を満たしていれば、どんな帯でも合わせることができますし、小物を自由に楽しむことができます。
まとめ
ということで、紬の種類についてまとめてきました。
やはり紬の一番の特徴は、産地の歴史や風土そして人々の生活がその背景にあるということです。
なので紬を着るということは、その地域における歴史を楽しむということでもあり、生産のいわれを学ぶということでもあります。
そんな日本の伝統を感じながら、ファッションとしての紬を楽しんで欲しいと思っています。
では、よき『きもの』ライフを(^^)y
奥の深い紬の世界ですが、魅力が溢れているんですよね。
この記事では、そんな紬について解説していく試みになります。