●訪問着や小紋とどう違うの?
●付下の見分け方って?
付下(つけさげ)は、非常にわかりにくい着物の種類です。

内容に入る前に、少しだけ私の自己紹介を…

・着物の営業・販売を18年しています
・着物の店舗運営(店長歴)11年
・現在は着物の制作にたずさわっています。
この記事は、以下の内容で話を進めていきます。
・付下がわかりにくいのは、商売が関連している!?
この記事を読むことで、少しだけ着物業界の闇に触れることもできます。
・付下はフォーマル用途の着物
・フォーマル用途の着物は種類が多くて細分化、その一つが付下
・付下は『訪問着より一格下・小紋より一格上』の着物
・見分け方は難しく境目も曖昧
目次
『着物の種類』付下(つけさげ)って一体なに?



今の付下の特徴とは違うんですか?

付下と呼ばれる着物は時代(というより商売の形態)によって変化しています。
それは後述します。
まずは本来の特徴を押さえる方がわかりやすいので、そこから始めます。

①全ての模様が肩山を頂点として上向きになっている
下記の図は反物を表しています。

点線部分が肩山になり、そこで折って仕立てることで、着物の前と後ろができます。

その肩山を頂点に上向きの柄を描いていきます。

次に説明する②の特徴とともに、フォーマル着物の基本要素となります。
補足


柄の向きを交互にすることで、前後ろ同じ全体柄となるのです。
②裾・左肩前・左袖前・右肩後・右袖後に柄のボリュームがある
次の特徴は柄の配置です。
下の写真をご覧ください。

下半身の裾と、上半身の左肩、そして左袖に柄が配置されています。
この図では見えませんが、右肩の後ろと右袖の後ろにも同様に柄が配置されています。

全体的に見たら図のようになる、ということです。
これがフォーマル着物の柄配置です。
③反物(縫い目)を渡って柄が繋がっていない(=絵羽模様でない)
これが本来の付下にしかない特徴になります。

上の写真は付下げの裾模様です。
反物との別れ目に渡って柄がありません。

対してこちらは訪問着、柄がつながって絵羽模様となっています。


これだと非常にわかりやすいのですが、それを覆す事態があります。
それを次に説明していきます。
『付下訪問着』という種類の登場で、よりややこしくなりました…

付下のTPOは冒頭でも話した通り、訪問着の一格下で、小紋の一格上です。
訪問着と小紋の中間という要素が、『幅広い席で着用できる』セールストークを引き出し、付下は商売上においてムーブメントを起こします。

そして『付下訪問着』という、ジャンルが登場します。
付下訪問着というのは『反物(縫い目)を渡って、柄がつながっている(=絵羽模様になっている)』付下のことを言います。


付下訪問着と訪問着では、明確な見分けるポイントがありません。
①訪問着と比べると控えめな柄ゆきが『付下げ訪問着』
②仕立てる前の状態が反物であるのが『付下げ訪問着』(訪問着は仮絵羽というザックリ仕立てられた状態で販売されています。)
こういった曖昧な違いだけです。
ちなみに下の写真は、付下として販売されていたものです。

確かにやや柄は少なめですが、これが訪問着と言われても疑問はありません。


『買い手がわからないことを知っている』と、これです。
さらに、種類が増えると販売チャンスも増えます。
『この商品は持ってない』と、オススメできるからです。



そこまで複雑になると『言い切った人が正しい』っていう世界になりますよね。
まとめ
ということで、付下という着物の種類について話を進めてきました。

種類の多さを着物の楽しみとするのはいいのですが、それを必要性と置き換えて販売促進しているという側面があるんですよね。

こういったことも着物を選ぶ参考にしてみて下さい。
その上で、着物はもっと気軽に自分らしく楽しんでみて下さい。
では、よき『きもの』ライフを(^^)y