着物の種類『振袖』【歴史・用途・選び方・相場の4点を解説】

着物の知識
●振袖ってどんな着物なの?
●振袖の用途って?
●振袖って何を注意して選べばいいのかしら?
●振袖を揃える時に考えておきたい『値段』とは?

振袖は着物の中でも最も華やかで、知名度の高い着物の種類です。

さとし
振袖のTPOは『未婚の女性の第一礼装』で、結婚していない女性が『式と名のつくフォーマルの場面』に着る着物とされています。
そんな着物の女王と言える『振袖』を、この記事では網羅的に解説していきます。

 

内容に入る前に、私の自己紹介を…

さとし
私さとし。
●着物の営業・販売歴18年
●着物の店舗運営11年(店長歴)
●現在は独立し、着物の制作にたずさわっています

 

この記事では、振袖についての以下の3点を掘り下げて解説します。

①振袖の歴史とその用途(TPO)
②失敗しない振袖の選び方
③呉服のプロが教える振袖の値段の相場

振袖についての悩みの解消をお手伝いする内容です。

読み進みてみて下さい。

着物の種類『振袖』【意外と知らない歴史と用途】

着物の種類『振袖』【意外と知らない歴史と用途】
さとし
袖の長い着物は昔からありますが、現在の振袖と呼ばれる着物が出てきたのは江戸時代と言われています。

 

長い袖は若い娘の舞踊を美しく見せ、やがて未婚の女性が振袖の袖を振ることで男性からの求愛の意思表示として使われます。

さとし
『振った』『振られた』という言葉はここからで、長い袖を前後に振ると『嫌い』、左右に振ると『好き』という意思表示になったらしいんですよね。
着物好き女子
女性らしい華やかな話ね。
素敵…

 

こうして振袖は、『未婚の女性の第一礼装』として定着していくのです。

振袖の用途【TPO】

着物好き女子
で、振袖ってどんなところで着るものなんですか?

振袖の代表的な着用用途は以下の通りです。

●成人式
●卒業式や入学式
●結婚式やその披露宴
さとし
これらが主たる振袖の用途ですが、それ以外の式でも着ても問題ないし、『和のお稽古事』をしている人は、その舞台や発表会などにも振袖を着用します。

 

着物好きマダム
初詣に来ていく人も多いし、『会社の新年初出勤を振袖で』という文化が残っているところもあるわよね。
着物好き女子
やっぱり、おめでたい華やかな席に振袖は合うわよね。

【着物販売のプロが語る】失敗しない振袖の選び方

【着物販売のプロが語る】失敗しない振袖の選び方
着物好きマダム
失敗しない振袖の選び方って何を注意すればいいのかしら?
適切なアドバイスをくれる人が、周りにいなくて困ってるのよね…
さとし
わかりました!
解説していきます。

 

まず考えるのは、振袖を『どの手段で手に入れるのか』です。

これが明確にならないと、振袖選びは非常に苦労します。

 

振袖の揃え方には3つの手段があります。

①購入する
②レンタルする
③親族の振袖を譲ってもらう
③の親族の振袖を譲ってもらうのは、母親の振袖が主となるので『ママ振』と呼ばれています。
わかりやすい表現なので、この記事でもその言葉を使います。

 

さとし
ちなみに今の着物市場での割合は【購入2:レンタル4:ママ振4】ということです。

まずは、この3つのどの手段を使って振袖を揃えるか、これを決めて下さい。

着物好きマダム
そうね。
そういった場合は、家族で話し合って決めないといけないわね。
さとし
これを決めていると、振袖選びは楽になるし、迷わなくてすみます。

 

これを前提に、以下の3点で振袖の選び方をお話しします。

①手段の選択が大切な理由
②3つの手段のメリットとデメリット
③やっぱり気になる振袖の価格の相場

手段の選択が重要な理由【振袖選びの苦労談】

着物好き男子
振袖って必要性があるから、選びやすいんじゃないんですか?
さとし
そう思われるんだけど、意外に難しいのが振袖選びです。
販売する私の立場からしてもそう思います。
選択肢が多い分、逆に悩んでしまうんですよね。
そんな振袖選びの苦労談を『振袖を販売していた視点』でお話しします。

 

振袖選びには、色んな人が関与してきます。

こんなケースがあります。

●振袖の着用者=お嬢様
●購入者(お金を払う人)=お母様
●決定者(口を出す人)=おばあ様
さとし
このケースでの振袖選びには、苦労した覚えがあります。
お嬢様とおばあ様の好みが合わないし、お母様には予算があるのでなんでもいいわけではないし…
最終的にはお嬢様が疲れてしまって、『振袖はもう着ない‼︎』と言い出す始末です…

これじゃあ、せっかくの振袖選びが台無しです。

極端なケースですが、『振袖選び』にはそれぞれの想いが出るので、よくある話でもあります。

 

なので、事前に『着用者・購入者・決定者』を明確にして方針を決めると、振袖選びはスムーズになります。

さとし
これって本当に大事なことなんですよ‼︎

振袖を選ぶ手段とそれぞれのメリット・デメリット

さとし
役割が明確になったら、そこから3つの手段【購入・レンタル・ママ振】のどれを選ぶかを決めます。

成人式は一生に一回の事で、ご家族で話し合って決める方が振袖選びは楽になります。

 

この3つの手段には、それぞれメリットとデメリットがあります。

解説していきます。

振袖の購入のメリット・デメリット

さとし
最近選ばれなくなっているのが、この『振袖を購入する』選択肢です。
着物好きマダム
晴れの舞台に、新調した振袖を着るのは、まさに門出にふさわしい選択肢だと思うんだけどね…。
着物好き女子
購入したら、その後も活用できるメリットもあるわ。
成人式以外でも、振袖を着てみたいのよね。
さとし
さらに姉妹がいるのなら、兼用するということもできますよね。

 

デメリットとしては、保管の問題が挙げられます。

この保管の問題は深刻で、これが原因で『着物を持つのはイヤ』と考える人はたくさんいます。

現代の住宅事情や着物に触れない日常を考えると、保管にハードルの高さを感じてしまうんですよね。

レンタルのメリット・デメリット

レンタルの良さは購入の真逆で、気軽さにあると思います。

着物好きマダム
成人式だけの振袖なら、レンタルが楽チンなのよね。
さとし
レンタルの需要は高く、それが故にレンタル業者のサービスの質もどんどん上がっています。

 

デメリットを上げるとしたら、長期的なレンタルができないことと、やはり誰かが着ているという、気分的なものでしょうか。

さとし
『想いには欠けるが、合理的である』そう言ったところでしょうか。
はれのひ問題

2018年、振袖のレンタル会社『はれのひ』が、成人式当日に突然休業しレンタルする予定だった振袖を届けずに、振袖を着ることができない、そんな事件が起きました。

 

これには、着物業界も衝撃が走りましたね。

これは『この会社の経営者の無責任さ』という以外、話すことはないのですが、業界の信頼度を落としたことと『レンタル』に対する不安を煽ったことは間違いありません。

ママ振のメリット・デメリット

さとし
自分の親族が着用した『思い入れのある振袖』を再利用する、シェアという概念を取り込んだ選択肢です。

大事にしていた振袖を、娘が節目の時に着用する。

『物語』としても素敵ですよね。

 

小物を変化させる(購入やレンタル)ことで、ベースの『ママ振』をアレンジすることもできます。

親子で、それを決めていくのも楽しいかもしれませんね。

 

このママ振の圧倒的デメリットは、寸法の違いです。

サイズが違う場合が結構あるんですよね。

さとし
「身長が変わらないから大丈夫」と油断は禁物です。
母世代と子世代では手の長さが違うことが多く、そして子世代のほうが手が長い傾向にあります。

 

サイズがあっていない(特に小さい)振袖は、かっこ悪いことこの上ないんです。

 

振袖によっては『寸法を変えることができない』こともあります。

着物好きマダム
結局、直すと購入やレンタルより高くなることもあるのよね。

【プロが教える】振袖の値段の相場

振袖の価格について考える考える
着物好きマダム
やっぱり、振袖の値段についての相場って気になるのよね。
さとし
そうですよね。
ここでは、着物の業界に携わる私が振袖の値段について深掘りしていきます。

振袖を購入する場合≪平均30万円≫

さとし
購入の場合には値段の上限がありません。
100万円以上する振袖もありますし、ものによっては1000万円の振袖もあります。

 

ただ、値段のボリュームゾーンは『30万円』といったところです。

さとし
これくらいの値段で買う人が多いのと、この値段で打ち出している小売店が多い、というのが根拠です。

 

振袖の販売形態では、『仕立てを要するもの』と『すでに仕立て上がってるもの』があります。

さとし
値段だけでいうと後者が安く、8万円でフルセットで購入した人もいます。

 

着物好き女子
どうして仕立て上がっている振袖の方が値段が安いんですか?

以下のようなことが考えられます。

・コスト削減のために大量に仕立てをしている
・雑誌などでモデルが着用したもの
・レンタルなどで使用していたもの

 

さとし
振袖をどういった揃え方をするのかは自由ですが、こういった事情を知っておくと検討の時の助けになりますよね。

振袖をレンタルする場合≪平均15万円≫

さとし
やはり、振袖のレンタルは購入よりも割安です。
着物好きマダム
確かにそれが、レンタルを選ぶ大きな理由だものね。

 

ただ、レンタルの場合は振袖だけでなく、下記のような様々なサービスがセットにされている場合が多いんですよね。

・前撮りなどの写真が付いている
・成人式当日の着付などの準備がついている
・成人式だけでなく、学校の卒業式でも着れるように長期のレンタルがある

こういった要素を付け足していくことで、レンタル振袖の値段は上がっていくということです。

購入の場合も同じことが言えますが。

振袖をママ振にする場合

着物好き女子
母の振袖が譲られるなら、当然値段はタダよね。
さとし
そうですね。
ただ、ママ振りの場合も下記のような場合には、値段がかかります。
・振袖のサイズが合わないので直す
・振袖をクリーニングする
・振袖を起点に帯や小物などを購入する

 

これらに関しては、どういったものを選ぶのかで変わります。

さとし
やはりこの場合も『方向性を決める』が重要ですね。

まとめ

☆この記事で話したこと☆
✔︎振袖の期限は江戸時代に遡る
✔︎振袖は未婚の女性の第一礼装
✔︎振袖を選ぶ場合は『方向性』を決めることが大事
✔︎振袖の値段の相場『購入=30万円』『レンタル=15万円』

振袖を選びは家族の『物語』です。

成長したお嬢様が、どういう思いで大人の仲間入りをしていくのか、そんな節目を演出し家族で確認する時なんですよね。

 

では、よき『きもの』ライフを(^^)y