着物の歴史を簡単に解説【今に通ずる近代史に絞って】

今の着物を知るには、『着物の歴史』を知ることが近道です。

着物の歴史と言っても、古代から遡るのではなく、この記事では明治以降の着物の近代史にスポットを当てます。
この記事の目的は『今の着物を理解する』で、そのためには『今の着物の形に近くなった明治以降の着物近代史』に焦点を当てる方がわかりやすいからです。

内容に入る前に、少しだけ私の自己紹介を…

私、さとし。
・着物の営業・販売を18年しています
・着物の店舗運営（店長歴）11年
・現在は着物の制作にたずさわっています。

明治以降の着物の歴史を掘り下げる意図は以下の通りです。

要するに、明治というのは着物を含めた『和文化』の転換点であり、それ以前と以降では大きくあり方が違うんですよね。
この時代の着物の歴史を理解することで、今の着物が置かれている環境がわかります。

着物の昔と今との違い【歴史・明治以降の近代史】

それでは着物の近代史を見ていきましょう。

着物の歴史・明治以降の近代史【絹の生産量の高まりと技法の進歩】

まずポイントは『技術の近代化』です。

明治といえば全てにおいて近代化が進みます。
着物に関しても、近代的な製糸工場が建設され、絹の生産量が一気に上がるんですよね。

これにより、絹は『手に入らない物』ではなくなり、一般の女性にも様々な種類の着物が広まります。

縮緬や綸子、銘仙などの絹織物もこの頃にできたんじゃ。

人々は、様々な質の高い素材の着物を着れるようになります。

さらに染色技法も発達します。
大量生産された絹素材が二次加工され、今までにない紋様が生み出され、流行していくんです。

今に通ずる『着物のイメージ』になってきたってことね。

着物の歴史・明治以降の近代史【男性の洋装・女性の和装】

次のポイントは『西洋の文化の流入』です。

鎖国だった江戸時代から明治になると、西洋の文化がどんどん入ってきます。

その中に『洋装』もあり、西洋と渡り歩く為にも日本人の洋装化は必須だったのじゃ。

ただ、洋装が広く一般的になるのはそんなに簡単ではありません。

洋装化の流れは外で仕事をする男性の方が早く進むことになります。

着物はやはり女性が主流で、大正末期から昭和初期の好景気も相まって、華やかで自由な色柄の着物が女性の間で広く着用されます。

やっぱり女性は、いつの時代もおしゃれを楽しんでいるのね。

着物の歴史・明治以降の近代史【戦争が着物にもたらしたこと】

続いてのポイントは『震災と戦争』です。

洋装化は徐々に女性にも浸透していきますが、そこで大きな転換点となる出来事が起こります。

関東大震災です。

この震災で『動作を妨げる構造の着物』を着ている女性が大きく被害を受けます。

確かに着物で走ったりできないものね…

このことは女性の洋装化が大きく進むきっかけとなるんですよね。

そして日本は、戦争の時代に突入して行きます。

戦争が進むにつれ、日本のあらゆる物資は不足し、衣類に関しても『贅沢は禁止』とされるようになります。

着物は贅沢な物だとされたのね。

そうなんですよね。
これで大正時代に栄えた着物の文化も、強制的に廃れていきます。

さらに戦争が進むと、男性には国民服が義務付けられ、女性はもんぺなどを着る様になるのです。

もんぺは着物と比べて活動しやすく、有事に際して着用が推奨されたんですよね。

華やかな着物は婚礼などでしか、陽の目を浴びることは無くなりました。

そう言った意味でも暗い時代だったのね。

【補足】家庭に残る着物の文化

戦前は『着物を作る裁縫』が、学校での授業の必修科目でした。

家庭において女性には『和裁の基本的な技術』が必須とされてたんですね。

私のおばあちゃんも、当たり前に和裁をしていたわ。

やはり女性の周りに、着物はあったんですよね。

着物の歴史・明治以降の近代史【戦後の着物】

続いてのポイントは『戦後の大きく進む洋装化』です。

戦争が終わり、女性たちは所持していたが着れなかった着物を着るようになりました。

もんぺは『戦争と貧しさ』を思い出すから、すぐに着る人がいなくなったって聞いたわ。

ただ、明治当初は高価で貴重だった洋服も、そうではなくなっています。

着物は『高価かつ煩わしい』などの原因により、洋服の流行には敵わず、徐々に着物を普段着とする人は少なくなっていくのです。

とはいっても、今と比べると着物を着る人はいます。

そのころには、ウールの着物が流行したって聞くわ。

ドラマやアニメでも、家庭では着物を着ている風景って見るものね。

それでも1975年くらいを境に、着物を着る人は少なくなっていくんですよね。

着物の歴史・明治以降の近代史【呉服業界の戦略】

続いてのポイントは『呉服業界の戦略』です。

着物の着る人が少なくなって困るのは誰か？

それは着物の販売で生計を立てる『呉服業界』です。

彼らは販売の促進を図るため、『TPO』や『格』などの着物の約束事を作って、それを宣伝します。
着物に『買う理由』をつけたということです。

これって今でもあるし、この宣伝に従って着物を揃えたのよね。

大きく変わったのは着物の値段です。

昭和30年では、絹一反は大卒初任給の金額の22,7％の値段でした。
これが昭和50年には34,5％になり、平成12年には57,4％にもなります。

着物はどんどん高級品になって行ったのね。
確かにそのイメージがあるわ。

着物を着る人が減る中で生き抜くには、この方法しかなかったのかもしれませんね。

ということで、呉服業界の戦略は一定の成果は見せました。

ただこれが逆に『着物は難しい』と、更なる着物離れにつながることにもなるのです。

着物の歴史・明治以降の近代史【自由な着物へ】

そんな絶望的な状況にあった着物ですが、やはり日本人の着物を愛する気持ちは無くなりません。

着物の市場は相変わらず下がってますが、着物を着たいと思う人は増えているんですよね。

確かに着物ってやっぱり着てみたいし、憧れがあるのよね。

今の着物は『価格』も『ルール』も『着方』までも多様化しています。
そして、その流れはこれからも進みます。

着物は昔と違って『生活の一部』では無くなりましたが、『女性の憧れ』であることに変わりありません。

まとめ

では、よき『きもの』ライフを(^ ^)y

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2023年11月25日

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