着物の生地の種類【代表的な5つの素材と絹の分類】

着物の知識
●着物に使われる生地の種類が知りたい
●着物の生地のそれぞれの特徴は?
●生地によってTPOの違いがあるのか?

着物には、様々な種類の生地が使われます。

さとし
この記事は、着物に使われる代表的な5つの素材を説明する試みとなります。

 

内容に入る前に、少しだけ私の自己紹介を…

さとし
私、さとし。
・着物の営業・販売を19年しています
・着物の店舗運営(店長歴)11年
・現在は着物の制作にたずさわっています。

 

この記事では、以下の生地と素材の紹介します。

●着物に使われる代表的な5つの素材
・絹(きぬ)
・木綿(もめん)
・麻(あさ)
・ウール
・ポリエステル
→それぞれのメリットとデメリットを解説

●絹の生地の分類8選
・縮緬(ちりめん)
・お召(おめし)
・羽二重(はぶたえ)
・綸子(りんず)
・緞子(どんす)
・絽(ろ)
・紗(しゃ)
・羅(ら)
それぞれの特徴を解説

 

さとし
これらを知ることで、着物の生地についての疑問が解決し、着用する時に何を選べばいいのかもわかります。

着物の生地の種類【代表的な5つの素材】

着物の生地の種類【代表的な5つの素材】
さとし
着物は色んな素材で作られていて、ここでは代表的な5つの素材を取り上げます。
着物好きマダム
それぞれに特徴があるのよね。

早速、見ていきましょう。

【着物の生地素材】絹(きぬ)

絹の着物

絹は蚕の繭から取れる糸で作られます。

着物の素材としては最高級品とされます。

着物好きマダム
やっぱり着物と言えば憧れの絹よね。

【着物の生地】絹のメリット

絹は『手ざわり』と『光沢』が、遥か昔より人々の憧れでした。

さとし
身体に馴染む絹の質感は、着ている人を美しく見せてくれます。

 

一般的に絹の着物は、他の素材より格上とされます。

着物好きマダム
フォーマル着物は、ほとんどこの素材で作られているのよね。

【着物の生地】絹のデメリット

その一方で、絹は『湿気に弱い』『ちぢみやすい』『変色もしやすい』そんな特徴があります。

着物好きマダム
確かに取扱いが難しいイメージね。
実際お手入れは大変で、うちにもほったらかしにして黄ばんだ絹の着物があるわ。
着物好き女子
そして、やっぱり絹って高価なものが多いのよね。
なかなか手が出せないの…

 

さとし
絹に関しては、その分類を詳しく後述します。

【着物の生地素材】木綿(もめん)

久留米絣
写真は久留米絣の反物、その技法が国の重要無形文化財に指定されている綿織物です。

木綿は綿の種子から糸を作り、それを生地にしたものです。

普段着用として、長く愛されている素材です。

 

着物好き女子
浴衣にも使われる素材ね。
私も木綿から着物を始めたわ。
綿素材の浴衣
吸水性に優れる木綿は、浴衣の素材としても優れています。

【着物の生地】木綿のメリット

木綿の最大の特徴はその丈夫さです。

 

着物好き女子
通気性や吸湿性にも優れ、着ていて肌触りもいいのよね。
着物好きマダム
自分で洗濯できるのもメリットだわ。
デニム 綿の着物
さとし
上の写真は綿素材のデニムの着物です。
普段着物として人気があります。

【着物の生地】木綿のデメリット

さとし
デメリットは、『ちぢみやすい』『シワになりやすい』所です。

 

着物好き男子
確かに綿素材は、すぐにシワになるよね。

そこに注意すれば、万能の普段着となるでしょう。

【着物の生地素材】麻(あさ)

麻は植物表皮の内側からとれる繊維であり、麻と苧麻(からむし)が代表的です。

着物好きマダム
夏着物としてお馴染みよね。
麻の着物 小千谷ちぢみ
写真は『小千谷ちぢみ』の生地
新潟県が産地の麻素材の着物

【着物の生地】麻のメリット

麻は『吸湿性』と『通気性』が最大の特徴です。

 

さとし
薄手で軽く、夏着物の定番です。
着物好きマダム
麻の着物は、涼しくて気持ちがいいのよね。
私も夏着物として愛用しているわ。
麻の長襦袢
写真は麻の長襦袢。
通気性がいい麻は自宅での洗濯も可能で、夏の長襦袢として重宝されています。

【着物の生地】デメリット

麻は 『染色性に劣る』『色落ちのしやすい』素材でもあります。

着物好きマダム
逆にそれが麻の『素材感』という特徴にもなっているわよね。

 

さとし
生地質はゴツゴツしていて、良さでもあるのですが、『シワになりやすい』特徴にもなっています。

【着物の生地素材】ウール

ウールの着物

ウールは羊などの『毛』から取れる素材になります。

着物好きマダム
普段着物の素材として、一世を風靡したわよね。

【着物の生地】ウールのメリット

さとし
ウールは厚手で暖かく、冬場に着るのに最適な素材です。
シワになりにくいので、気軽な普段着として愛用されているんですよね。
着物好きマダム
吸湿性にも優れているので、蒸れなくて着心地もいいわ。

【着物の生地】ウールのデメリット

さとし
動物性の素材は、虫食いの心配がつきまといます。
着物好き女子
洗うとちぢむので、お手入れも慎重にしないといけないわ。

【着物の生地素材】ポリエステル

ポリエステルは石油から作られる『化学繊維』です。

着物好き女子
洋服でもよく使われる、身近な素材よね。

【着物の生地】ポリエステルのメリット

ポリエステルは安価で、強度があり洗濯もできるので、気軽に扱える素材です。

着物好き女子
洗える着物として、非常に人気のある素材よね。
ポリエステルの洗える着物
写真はポリエステルの洗える着物です。
汚れても気にならない気軽な着物です。

【着物の生地】ポリエステルのデメリット

デメリットは『通気性が低い』『静電気が発生しやすい』です。

着物好き女子
確かに気候が暖かくなると、暑くて着てられないわ…
着物好きマダム
冬場は静電気が大変なのよね…

 

さとし
ただ、化学繊維は技術の発達し、どんどん改良されています。
ポリエステルは、未来ある素材と言えるんですよね。

【着物の生地の種類】絹の生地の種類8選

【着物の生地の種類】絹の生地の種類8選

代表的な『5つの着物の生地』を紹介しました。

次は絹素材を深掘りしていきます。

【絹の生地の分類】縮緬(ちりめん)

縮緬の生地

縮緬は、経糸(たていと)にほとんど撚らない糸を使い、緯糸(よこいと)には撚った糸を使います。

さとし
右回りの撚りをかけた糸と、左回りの撚りをかけた糸を交互に織り込むことで、生地の表面にシボ(凹凸)が現れるのが特徴です。

 

京都府の丹後や、滋賀県の長浜、新潟県などが主な産地です。

縮緬素材の着物の用途

さとし
縮緬素材は絹の着物の素材として定番で、あらゆる着物の生地に使われます。
着物好きマダム
そうね。
私の揃えたフォーマルの着物は縮緬素材のものが多いわ。

【絹の生地の分類】御召(おめし)

お召

御召は、経糸(たていと)に『八丁撚り』という強い撚りのかかった糸を使い、緯糸(よこいと)にも撚りの強い『御召緯(おめしぬき)』という糸を使った生地になります。

さとし
これにより、縮緬よりシボが大きくはっきり現れます。
さらに、糸の段階で精錬することにより、コシのある生地となります。

 

江戸時代の将軍が、この素材の着物を好んで『お召』になったことから、この名前がついています。

京都西陣が有名な産地ですが、新潟の塩沢御召は伝統工芸品に指定されています。

お召素材の着物の用途

さとし
将軍が着用した『いわれ』から、無地の御召はフォーマルでも着用できるとされています。
着物好きマダム
お召は着心地もいいし、おしゃれな織り柄がたくさんあるから、おしゃれ着ってイメージの方が強いわよね。

 

着物好き男子
男性着物としても憧れの一枚なんです。
いつか、御召の着物をつくりたいなぁ…

【絹の生地の分類】羽二重(はぶたえ)

通常であれば、同じ太さの経糸(たていと)と緯糸(よこいと)で織り上げるのに対し、羽二重は経糸(たていと)を細い2本の糸にして織っていきます。

さとし
そうすることで、『やわらかく』『軽く』『光沢のある』仕上がりになります。

 

礼装の着物に主に使われますが、その特性を活かし裏地としても使われる生地になります。

【絹の生地の分類】塩瀬(しおぜ)

塩瀬羽二重の略で、厚手の羽二重になります。

主に地として使われます。

着物好きマダム
織の着物に塩瀬の染め帯!
憧れたわぁ…
塩瀬の帯 塩瀬の帯 塩瀬の帯
写真は塩瀬の染め帯です。
塩瀬の素材に、染めで柄を描いています。

【絹の生地の分類】緞子(どんす)

繻子織(しゅすおり)という織り方で作られる絹織物です。

 

厚地で光沢があり、どっしりした高級感があります。

金襴緞子(きんらんどんす)と言われるように、高級織物の代名詞となっています。

金襴(きんらん)とは、金箔や金糸を使って柄を出す織物です。

帯にも使われます。

【絹の生地の分類】綸子(りんず)

綸子、緞子とよく似ていますが、練り糸を使う緞子とは異なり、生糸を用いています。

 

艶があり滑らかな生地で、やわらかい質感があります。

礼装の着物、そして襦袢にもよく使われます。

【絹の生地の分類】絽(ろ)

絽

絽は捩り織(もじりおり)で織られる、薄地の生地になります。

緯糸(よこいと)7・5・3本おきに経糸(たていと)2本を交差させて織っていくことにより、透け感が出ます。

夏物の着物の定番として使われます。

絽の着物の用途

着物好きマダム
絽は夏物の中でも、フォーマル感が強いイメージね。
絽の訪問着もあるし、黒紋付の夏用も絽の生地よね。
さとし
逆に言ったら、カジュアルのイメージは少なく、どちらかというと次の紗(しゃ)が夏のカジュアルのイメージですよね。

【絹の生地の分類】紗(しゃ)

紗

紗は絽と同じく捩り織で織られる、薄地の生地になります。

緯糸(よこいと)を1本づつ取った上で、強撚糸の経糸(たていと)を2本づつ絡ませて織り上げます。

夏の着物で使われることの多い生地になります。

 

さとし
紋紗と呼ばれる、紗に地紋を織り出したものが広く流通しています。

縮緬素材の着物の用途

着物好き女子
紗は薄物の羽織として使われることも多いわ。
ちりよけとしての要素と、軽やかに使えるのがいいのよね。

【絹の生地の分類】羅(ら)

【絹の生地の分類】羅

絽や紗と同じく捩り織で織られる、薄地の生地になります。

羅は3本以上の経糸(たていと)を絡ませることによって、網のように目の粗い生地になります。

特殊な機を使っているので、流通量は非常に少ないです。

帯地やちりよけコートの素材などに使われます。

まとめと関連

着物の素材の特性を理解すると、どんな場面に着たらいいのかがわかるし、着物の楽しみも増えます

 

着物好き女子
確かに!
素材って、洋服だったらすごく気にするものね。
さとし
着物の場合はやや情報が不足(閉鎖的)しがちなので、もっと気軽に知ってもらいたいんですよね。

 

 

では、よき『きもの』ライフを(^^)y