『着物のクリーニング』は一般的に『丸洗い(京洗い)』と呼ばれます。
ではこの『丸洗い(京洗い)』とは一体、どういうものなのか?
今回の記事では、そんな『着物のクリーニングの付随加工』を解説していきます。
あわせて、着物をよみがえらせる様々な『職人の技』も紹介します。
その前に、少しだけ私の自己紹介を…
・着物の営業・販売18年
・着物の店舗運営11年(店長歴)
・現在は独立し、着物の制作にたずさわっています
この記事では、以下のような悩みの解決のお手伝いをするものです。
②ちゃんと着物をキレイにしておきたい
③昔の着物をよみがえらせる為にはどうすればいいのか
こんな『思い』をお持ちの方の助けになればと思いますし、単純に着物の加工の知識として使っていただいてもいいと思います。
【着物のクリーニング】『汗抜き』を始めとする付随加工の説明
まずは、着物のクリーニングをするとき、よく一緒に提案される付随加工の説明です。
着物を着用すると、やはりいろんな汚れなどがつきます。
『丸洗い(京洗い)』だけではどうしても落としきれないので、追加として提案される加工です。
着物のクリーニング『汗抜き』
着物を着用すると『汗』をかきます。
それを着物が吸い込んでいるんですよね。
汗の成分は油分ではないので、通常の『丸洗い(京洗い)』だけでは落としきれません。
それをほおっておくと、汗ジミとなり最終的には変色します。
それに対して『汗抜き』をという加工があります。(『汗処理』ともいったりします。)
作業内容は『汗をかいている部分に水を吹きかけて汗を取り除く』です。
脇の部分や着物の帯で隠れる部分、そして着物の下に着ている『長襦袢』などには汗がつくことが多いので、しておくといい加工ですよね。
(※さとし調べ)
着物のクリーニング『シミ抜き』
シミには色々あります。
②血液によるシミ
③泥はねによるシミ
これらの『シミ抜き』は、シミができてからどれくらいたっているかが重要になります。
シミを放っておいて定着すると、『黄変(変色)』することになります。
そんな『シミが定着し着物の色を変えてしまっている状態』になると、『シミ抜き』では落とせなくなります。
なんでもそうですが、早めの対応が重要ですよね。
(※さとし調べ)
着物のクリーニング『黄変直し』
シミの強化版が『黄変(変色)』となるわけですが、これも加工で直すことはできます。
『黄変(変色)直し』には、薬品で取るというやり方もあれば、上から色をかけて周りとなじませるというやり方もあります。
例えば…
②『黄変(変色)』の上に金彩をのせる
③『黄変(変色)』の上に刺繍をする
④全体的に『黄変(変色)』してるものを染め変える
こんなやり方です。
『黄変直し』という概念からは離れてしまいますが、こうやって着物のシミや黄変(変色)を目立たなくする加工なんですよね。
着物のクリーニング『ガード加工』
着物にする撥水加工で、フッ素系樹脂で着物をコーティングします。
布に水滴を落とすと水がしみこみますが、ガード加工をするとしみこまず水滴がのります。(上の写真の感じです。)
つまり『丸洗い(京洗い)』で落ちない『水溶性の汚れ』から着物を守ってくれるんですよね。
さらにガード加工をしている着物は汚れも落としやすく、クリーニングの加工代金も安く済むことがあります。
弱点は『摩擦』に弱いというところです。
摩擦によってガード加工の効果が弱まりますので、注意が必要です。
こんな便利な『ガード加工』、着物を新しく作る時は是非してほしい加工ですが、すでにでき上っている着物にもすることができます。
その場合は、しっかり汚れを落とした状態でないと、汚れごと『ガード』してしまうので注意が必要です。
補足
このガード加工には色んな名前があります。
②ハジック加工
③スコッチガード
④はればれ加工
業者や会社によって、それぞれの名前をつけています。
会社によっては、ガード加工をつけることで『丸洗い(京洗い)』のサービスを無料で受けられるところもあります。
反物の状態にガード加工をする場合より、着物の状態でするほうが若干割高です。
(※さとし調べ)
まだまだあるぞ!『着物のクリーニングの付随加工』
ここからは、『着物のクリーニングの付随加工』というよりは、本格的な着物のお直しの加工になります。
家にある古い着物をよみがえらせたい、着物をオーバーホールしたい、そんな時に考える加工内容です。
着物のクリーニング『洗い張り』(この加工が基本)
『洗い張り』とは、着物をほどいて反物の状態にし水を通して洗うという加工です。
ドライクリーニングで落ちない汚れも落ち、水を通すので非常に綺麗に洗い上ります。
『着物の寸法直し』、『着物の染め替え』、『着物のリメイク(着物以外のモノにする)』、こういう加工も基本的に『洗い張り』をしてからやっていきます。
『洗い張り』の手順をまとめます。
→まずは仕立てあがっている着物を解いていきます。
『端縫い』
→それをつなぎ合わせていきます。
『洗い』
→反物の状態になった着物を水と洗剤で洗っていきます。
その後、乾かします。
『のりを入れる』
→布のりを入れていきます。
これで生地の風合いを保ちます。
『湯のし』
→最後に蒸気をあてて着物を湯のし(調整)していきます。
これは『洗い張り』単体の価格の相場です。
(※さとし調べ)
着物のクリーニング『染め替え』
洗い張りで反物に戻した状態で、染料を加えて染め替えていきます。
『染め替え』もいろんな種類(やり方)があります。
『染め替え』のやり方や、加工の手間によって『日数・価格』に違いが出てきます。
数十万円かけて染め替えを行う場合もあります。
最低でも『30,000円』くらいかかります。これは、『染め替え』単体の価格です。洗い張りや仕立て直し等の金額は別途になります。
(※さとし調べ)
着物のクリーニング『仕立て直し』
『洗い張り』によって解かれた着物を仕立てる作業です。
元の寸法から変更して仕立てることもできるんですよね。
裏地の交換
着物を仕立て直すときには再度『裏地』をつけます。
その『裏地』を新しいものにするか、もとあったものを使うかによって仕立て直しの『金額』が変わります。
当然、あるものを使った方がお安くはなりますよね。
着物以外のものに仕立て直す
『できるできない』は着物の状態にもよりますが、着物は着物以外にも仕立て直すことができます。
よくあるのは、着物を羽織にするパターンです。
上に羽織る『羽織』は着物より短くて済むので、身丈が足りない着物を『羽織』に仕立て替えたりするんですよね。
その他には、羽織を『名古屋帯』にすることもできます。
僕も店長時代にその加工をよく提案しましたが、すごく好評でした。
着物のクリーニング『その他の加工』
その他の加工も補足程度ですが説明します。
紋替え
着物についている『家紋』を変更する加工です。
紋は描かれている紋と、刺繍でする紋があります。
どちらも変更は可能です。
紋の数も『5つ』と『3つ』と『1つ』とあり、数が多いほど加工に手間がかかります。
かけつぎ
着物に穴があいてしまったのをふさぐ加工です。
裏から生地をあてて、穴をふさいでいきます。
リメイク
着物を着物以外のモノに仕立て替える。
最近では結構流行っていますよね。
①草履にする(鼻緒だったり、草履の台だったり)
②和装のバックにする
③ショールにする
『和』関係
①几帳にする
②タペストリーにする
③掛け軸にする
『洋装』関係
①ワンピーズをつくる
②ドレスをつくる
③アロハシャツをつくる
まとめ
ということで、着物のクリーニングの付随加工についてまとめてきました。
着物の加工の技術は日々進歩しています。
なので、着物の付随加工はこれからもっと増えていくかもしれません。
最後にそんな『着物の加工』を統率する人を紹介します。
悉皆職人
着物は分業で成り立っています。
それぞれの工程をそれぞれの専門の職人が行います。
例えば、『着物を染め変える』場合…
②染の職人たち
③仕立てる職人たち
ひとつの工程に、何人もの職人がいて着物の加工は進んでいきます。
それを取りまとめる人を『悉皆職人』といいます。
着物づくりの『工程』一つ一つを熟知し、作業の割り振りをしていく人のことです。
なので『着物のお直し相談会』の事を『悉皆展』と言ったりします。
着物の用語として覚えておくと、使えるかもしれませんね
現代の住宅事情にも合わせた着物の保管の便利アイテムを紹介しています。
コチラも合わせて参考にしてみて下さい。
では、よき『きもの』ライフを(^^)y
なので、油分の汚れは落ちますが、基本的には水溶性の汚れが落ちません。