
この道16年の着物屋の店長です。
大学を卒業してからずっと、この『きもの街道』で営業・販売をしています。
今は、10人くらいの従業員を従えて、『店舗マネジメント』をしています。
着物の市場は30年来、規模が縮小しています。
しかし、近年その右肩下がりが止まりました。
『必要性(=お道具)』としての『着物』が終わったんですよね。

着物が『揃えなければいけないもの』であった頃、そのニーズを喚起するために、『商売人の作戦』としては、着物の種類を多くする必要がありました。
ニーズを増やすという最も簡単なやり方ですよね。
『種類』はあればあるほど、揃えようとするんですよね。
そんな着物のTPOはコチラ

しかし、洋服と同様に式服の需要は減り、気軽に着ることのできる着物が販売されるようになっています。
そんな中で、私『さとし』の話です。
16年前にこの業界に入った当初、着物ニーズの文化は『風前の灯火』でした。
そんな私の『新入社員の頃』のお話しをさせていただきたいと思います。
少し古臭い要素もありますが、営業のご参考になるのではと思っています。
目次
まずは名簿獲得【営業の基本は顧客の獲得にあり】
営業に『絶対必要なこと』は、お客様名簿の獲得です。
『営業の仕事』は、その対象がなければ始まりません。
なので、『名簿』の獲得は営業パーソンの必須課題です。

駅にはたくさんの人がいるので、そんな人達に『アンケート』をお願いするんですね。
僕たちはどんな炎天下でも、着物を着て『アンケート』をひたすら取り続けます。

皆さんも駅前でアンケートをお願いされても、大体答えないでしょ…
それでも一日『20枚』くらいのノルマを与えられ、ひたすら名簿獲得に奔走しました。
まあ、毎日毎日頑張りました。
「こんなつらいことがあるのか」という日々でしたが、とにかく一生懸命頑張ったのが思い出です。
ただ『名簿』だけが増えても、売上にはつながりません。
今度は、集めた名簿に電話をかけるんですね。
『動員(=集客)』の始まりです。
着物の動員方法【営業の基本は集客】
その集めた名簿に対して、チラシを送って動員をかけます。
その当時は『ニーズ(必要性)』が全盛期でした。
なのでチラシの内容は
②振袖→これは言わずもがな、成人式の定番ですよね。この需要を掘り起こすために、アンケートには家族構成を書く欄がありました。うまくできています。
③留袖→これも定番なのです。結婚式にお母さんが着る着物ですね。
などなど…
ニーズの商品で固められたチラシで、我々は『受話器』を片手に動員活動にいそしみます。
当時は携帯電話がようやくみんなが持ち始めた時代。
家の固定電話や携帯に、とにかく『電話をかけまくる』のが僕たちの仕事でした。
このやり方で、お客様は集まりました。
とにかく、数を追わせるやり方です。
これは今も昔も変わりないのかも知れません。
人が動けば商売のチャンスが出てくる。
この原則は不変です。
『ニーズ(必要性)の訴求』とはなにか?
必要性を訴えるやり方とは一体どういうことなのか?
非常に簡単に言います(誤解がない様にお願いします)
それは…

つまり、『これが無いとダメですよ(=もっと言うと「これが無いと恥をかきますよ」)』という話をしていくんですよね。
着物には『ルール』があります。
この『ルール』にそって、ルール違反を早期に発見して告知するのが、必要性の訴求です。
非常に『日本的発想』なんですが、そこは日本の文化『きもの』です。
これが長く『着物の営業』の王道とされてきました。
とにかく、そのことに全力を費やすのが『16年前の僕たち新入社員』の仕事でした。
着物は語って売る【説得という名の販売】
では、どうやって着物を売るのか?

着物は文化と歴史があり、それぞれに『いわれ』があります。
それを覚えて『語る』ことが、販売の主たる手法でした。
特に喪服です。
この着物は『お葬式に出る』、全体が真っ黒なきものです。
帯も黒になりますので、「コーディネートうんぬん」の話ではありません。
だから『なぜ必要なのか』、『この商品がいかなるものなのか』を【語り】で商売をしていきます。
その他の商品でもそうなんですね。
当然着姿は重要ですが、基本的には最後は『語り』です。
その語りというのは『商品にまつわること』です。
それをどれだけ伝えれるかが、キーポイントでした。
それが上手な人が、『売れる販売員』だったんです。
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『語り』は今も重要です
いかにも昔の販売のように言ってますが、今でも『語り』は重要です。
『買う買わないの判断』をお客様が迫られたとき、その商品の用途や品質は重要ですよね。
ただ、今の『語り』は内容が変わってきています。
今の『語り』は、『想い』を語らなければいけません。
お客様の未来に、この商品がどう影響を及ぼすのか?
→そこに我々、着物屋がどういう風に関わっていくのか?
そういうことが重要で『お客様が求めていること』になります。
これにお客様が納得を示せば、おススメすることが可能になります。
この『想い』は、ただマニュアルのように文章を並べても伝えることができません。
説明は文章の朗読で(聞いてくれるなら)伝えれますが、『想い』は経験やプロセス、そしてビジョンが必要になります。
これは『上手に伝える』ではなく、『誠実に一生懸命伝える』ほうが、お客様に伝わります。
これが営業の面白いところです。
『充実したスキルのある販売員』を、『経験もないピュアな新入社員』が追い抜いたりするのが今の営業の醍醐味です。

最後に
営業のやり方は『時代』によって変わります。
電話という話がありましたが、今の時代『知らない電話番号』から電話があってもなかなかでません。
個人では特にそうです。
今ではSNSを使った動員なんかも主流ですよね。
着物屋でも、『その時代』の波に飲み込まれます。
ただ、忘れてほしくないのは『それでも営業には泥臭さ』が必要なんですよね。

人と人とのぶつかり合いの中で、人は行動を起こします。
この『基本原則』は不変なんですよね。
これを『楽しむことのできる人』が営業に向いている人なんです。
そしてそういうことの出来る営業パーソンが、『お客様の信頼』を得て、成果を出す人なんですよね。
16年前のあの頃を思い出しながら、再確認しました。
では、よき『きもの』ライフを(^^)y
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